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あなたの子供が欲しいのに

「だから、別れようか」と言ったら殴られた。
「雄太の言い分だと、子供が出来ないって知りながら結婚した夫婦には未来が無いってことだな」
ズキ、と心臓が痛んだ。そう言う意味じゃない、そう言う意味じゃないんだ。
「…でも、男同士じゃ結婚も出来ないし」
「入籍しないで暮らしてる夫婦なんかいくらでもいる」
「男同士だから、一緒に暮らしたら変な目で見られるよ」
「同棲しないで長年恋人を続けてる関係だって、世の中には山ほどあるよ」
涙が頬を伝って落ちた。
一度落ちると、後から後からぽたぽたと落ちてゆく。
ため息をついて、修介が俺の頬を撫でた。
「…なあ、俺はどんな目で見られてもかまわないよ」
「お、俺は気にするよ。それに、どんなに頑張っても、お前に赤ん坊を抱かせてやれない」
「そりゃ、お前も俺も男だし」
「修介、赤ん坊、欲しいだろ?」
「え? 欲しくないけど。なんで俺が子供欲しがってるとか思ったわけ?」
「だって…こないだのショッピングセンターで、羨ましそうに家族連れ見てたから」
「いやいやいやいや」
呆れたように手を振って、修介がまたため息をついた。
「あれはさ、兄貴の所の甥っ子を思い出してたんだよ。少しもじっとしてなくて、すごく大変そうだったろ」
そうだったっけか。修介の様子しか見てなかった。
「それで雄太は俺と別れようとか思ったわけ」
「だって」
「俺が孕めないから?」
「修介、」
「馬鹿じゃねぇの。つっこむだけつっこんどいて、それかよ」
「……ごめん」
「子供がなかろうが、結婚出来なかろうが、一緒に暮らせなかろうが、保証が無かろうが、俺はお前と一緒にいるよ」
涙は止まらず、唇に流れ、殴られた時に切れた口の中の傷に滲みた。
「雄太も俺と一緒にいるって誓え」
「誓う。……修介、ごめん」
いいよ、と言う修介の顔は笑っていた。本当は、俺がお前との子供が欲しかったんだ。
俺はもう一度、小さく、ごめん、と言った。