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学生と老教授

父の同級生だったという水谷教授は、体育会系の父とは
全く正反対の物静かな雰囲気で、初めてその関係を知った
僕は大変に面食らわされたものだった。

「みずや、です。たに、では無く」

低く芯の通った声で交わされた最初の言葉は、今も僕の中で
しっとりと響いている。あの人の優しい笑顔と共に。
普段雄弁な父なのに、教授の話となると何故か口を噤んだ。
まるで、何か後ろめたい事でもあるかのように。

不思議な2人の秘密めいた関係に、何かを突き動かされたように僕は。
謎を探るかのように、まるで、囚われるかのように。

どうしても堪え切れない感情は、ある日。
父と同じ齢のその人を、無人の空間の、教壇へと押し付けてあまつさえ。
女性にするかのような口付けをするまでに。

大した抵抗もなく、普段と同じ物静かさで。
ふわりと白髪混じりの髪をゆらめかせ、教授が口にした言葉。

「…全く、こんな所まで彼と一緒とは」

その時僕は、全ての秘密を知った。