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チロるチョコ

何気なく探ったポケット。指先に何か硬いものが当たった。何気なく取り出してみる。
――――何だコレ?
手のひらに乗っかっているのは牛柄の小さな四角いもの。これが何なのかはわかっている。日本中どこのコンビニでもお目にかかれるだろう1つ10円の一口サイズのチョコレート、チロるチョコだ。
 しかし、こんなものを買った覚えはないし、ジャケットのポケットに入れた覚えも一切無い。もしや去年のものかと身構えたが、クリーニングに出した後にこんな綺麗な四角を保っていられるはずがない。今冬出してから入れられたものだろう。―――そういえば先日、弟がちょっと借りるとか言って着て行っていたような気もする。
つまりあのでかくて可愛くない弟が買って入れたということだろう。なんて似合わないことをするのか。
「あ! チロるチョコじゃん。しかも最近見ないちっこい10円サイズ。懐かしー!!」
掌に載ったチロるチョコをぼけっと見ていたら目聡く隣にいた奴が発見して妙に嬉しそうにはしゃぎ出す。
「ちっこい10円サイズ? チロるチョコなんて全部同じ大きさで10円じゃねーの? 」
「それがちゃうんですよ! 最近コンビニで見るのはソレよりちょい大きい20円のなんだなー。ちっこいの見たの久しぶり! お前、あんま甘いもん好きじゃないっしょ? ちょーだいちょーだい!」
「ああ」
両手を差し出して頂戴頂戴繰り返す奴に掌にあるチロるチョコを渡そうとする---が、これはもしかして日頃のお返しに使えるんじゃないかと思い立ち、やめた。
「おい? くれんじゃねーのかよ?」
「んー、俺もちょっと食べてみたいんだよな」
素早く包みを開いて白と黒の小さなチョコを口に入れた。
「あーーーーー! ひっで!! 俺も食いたかっ」
文句が続きそうな口を塞いで、砕いた半分を奴の口に押し込めた。
「半分こな?」
珍しく顔を赤くして目を見開いている奴を見て満足する。いっつもやられっぱなしなのだから、たまにはこんな可愛い驚き顔を見せてもらっても罰は当たるまい。
奴は口に手を当てて下を向いてしまった。赤くなっているのを隠しているつもりかもしれないが、さっきばっちり確認したし、未だに赤くなった耳は丸見えなわけで。
にやにやしながら見守っていると、奴が顔を上げてにっこりと笑った。
「なんかこっちのが大きかったみてー。返すよ」
 下から口を塞がれ、驚いている内に舌が入ってきた。口内を嘗め尽くし、俺の舌に絡め、吸って、一度離れ、ちゅっと音を立ててもう一度軽くキスしてから完全に離れた。
「あんまいねー」
奴がにっこりと笑う。
………ああ、また負けですよ。甘い甘いご馳走でございましたとも。