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携帯電話

200*/12/06 02:01
【件名】

【内容】
久しぶり、俺のこと覚えてますか?
卒業して5年だっけ?まったく連絡取ってないから、忘れてるかもね。
同窓会にも成人式にも行かなかったし。

お前にこうしてメールをするのは、これで最後になると思う。
ひとつだけ言い忘れていた事を思い出したので、最後っ屁がわりに伝えておきます。

お前のこと、好きでした。友達じゃなくて、うん、そう、好きだった。
好きだったよ。好きでした。いや、今も好きです。

久しぶりのメールがこんなでホントごめん。
どう思うかは、お前次第です。気持ち悪いと思った?思ったかなぁ。

明日の午後、携帯電話を新しくするつもりです。

卑怯なことは十分に分かっています。分かってます。
気持ち悪いと思ったなら、それでいい。
きもいメールが来たって誰かに言いふらしてもいいよ。

ごめん。ごめん。ごめん。本当に、ごめん。
忘れてな。それでは、さようなら。

うっかり消し忘れていたアドレスから届いたのは、みっともない愛の告白だった。

高校を卒業して、下宿先まで遊びに来いよと言って分かれた、
それきり会ってもいない友人からだ。正直、顔もろくに覚えていなかった。
あの頃は数人たむろして遊び呆けていたし、今そのメンバーで付き合いがある奴はいない。
みんなちりぢりになってしまっていた。
ひとつだけ分かるのは、女の子からではない、ということだけだった。そうでなきゃ
男子トイレで煙草をふかして説教喰らう、なんて事件はおこらなかったはずだ。
不思議なもので、そういうくだらないことばかりははっきりと覚えていた。
顔すら思い出せないくせにな、と思いながら、僕は随分古くなった携帯電話を宙に放る。
差出人は「ヨースケ」。これはもう紛うことなく男だ。
――拙い文だ。どんな気持ちでこれを打ったんだろう。
気持ち悪いとか何とか言う前に、ふとそれに興味がわいた。
僕はTVの上に置いた目覚ましを見る。午前10時31分。
まだ間に合うだろうか。
ベッドの上に落ちた携帯電話を拾い上げて、僕はそっと「返信」を選択した。