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煙草の匂いのするマフラー

パッパー、とどこか遠くで車のクラクションの音がした。
心が一度体から離れて、また元に戻っていく。冷静になれ、冷静になれ、俺。
パッパー、パーとまた車のクラクションが聞こえた。
トロい車でもいんのかな、と慎二に言ってやりたくて、
でもその慎二が俺を抱きしめて、俺の顔は慎二の首というか
首に巻かれたマフラーに押さえつけられているので口を開けない。
ああ、なんだこのニオイ、煙草か?
「アッちゃん、ごめんな」
すっかり冬に浸かった夜の空気は、冷たく痛いくらいで、
慎二に触れられている部分だけあたたかい。
「アッちゃんごめんな。ごめんな
俺アッちゃんのこと好きだったんだよ」…ああ、そーかよー過去形かよーと笑って誤魔化したいのに
俺の顔はマフラーに埋まったまんまなので何も言えない。
「…今も好きなんだよ」
うっせえ、ばか、そんなしんみりした声出してんじゃねえよ。
そう言いたかったのに俺の顔は、煙草くさいマフラーの中なのだった。
ちくしょう、あったけえなあ、と俺は声には出さず呟いた。