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絶対に知られたくない人

人里離れたこの学校に、転校生が来た。

噂によると、転校生はジャ●ーズジュニア真っ青なかわいらしい顔立ち、編入試験もほぼ満点。
転校初日に副会長の似非スマイルを見抜き、寮の同室である一匹狼な不良を懐柔。
双子会計を見分け、無口ワンコな書記の言いたいことを理解し、会長に「面白い」と言わしめたらしい。

随分とスゴい奴が来たものだ。
既に転校生の親衛隊も作られたとも聞いた。
近いうちに生徒会入りかもな、と生徒会顧問が呟いていた。

そんな面白い奴なら、是非お目にかかりたいと思いながら、タイミングが合わずに早一ヶ月が過ぎていた。


どうやら生徒会入りが本格的に決まったようだ。

それを知ったのは書面だった。
各委員会当てに配られたプリントに、生徒会補佐の承認を求める内容が書かれていた。
時期が時期なため、選挙とはいかなかったらしい。

生徒会役員やその親衛隊からの承認は受けており、あとは各委員長のみとなった時点で、初めて転校生の名前を知った。


……関わりたくない。


額に手を当て、ため息を一つ。
まさか、そんなバカな、あり得ない。

「委員長?」

副委員長が不思議そうな顔でこちらを見る。

「承認はする。これをあっちに持って行ってくれ」

署名はした。わざわざ足を運ぶ気はない。
パシり…ではなく、お使いを頼めば

「いや、顔合わせもあるでしょうし、委員長が行ってください」

バッサリと切りやがった。殴りてぇ。


渋々、本当に渋々と生徒会室まで行き、深呼吸。
いない、絶対いない。信じよう。

「失礼します」

ノックをし、挨拶と共にドアを開ける。

「俺の隣に来い、梓」
「ほら梓、好きなケーキ用意したよ」
「「梓ー、遊んでよー」」
「あずさ、こっち…」

そこには異様な光景が広がっていた。
役員が揃いも揃って一人を求めている。
で、そいつはと言うと

「だから、俺はてめぇらみたいな雑魚相手にしてる暇ねぇんだよ」

顔に似合わない口調で、毒を吐いている。

いたよ……
帰るか、と踵を返そうとしたら

「桜井、書類か」

空気読めないバカ、会長が俺を呼んだ。
転校生がこっち見てるじゃねーか、ボケ。

「承認はする。後は関わらない。じゃあな」

近くの机に奥だけ置いて、さようなら……は出来なかった。

「久しぶりだな。会いたかったぜ?」

俺の右腕、離せや。

「折角会いに来てやったのに、再会に一ヶ月もかかるとは思わなかったぜ」

まさか、人知れず入学したここにまで来るとは。

「まあ、仲良くやろうぜ。風紀委員長さん」

鬼だ。天使の笑顔を持った鬼がここにいる。

多くの人を魅了し、侍らせ、心を乱すのを得意とする友人。
笑顔で『お前が好きだから、絶対貰う』宣言されたときには、嬉しさなんかよりも恐怖を感じて逃げに走った。

それなのに、知られてしまった。
こんな山奥の学校にまで来たのに。
鬼から逃げるための檻の中に、鬼が入ってきてしまった。

「俺から逃げられると思うなよ」

いや、逃げるけど。