「4-699-2」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

4-699-2」(2010/05/24 (月) 23:27:41) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

裏切り者 ---- 舞台は少し前の時代、東西ドイツ分断間もない頃なんかどうでしょう。 国境を越えようとして逮捕された受けを、攻めが助けるというシチュ。攻めには国境警備隊の長を勤める父親がおり、攻めもその下で働いていて、仲間と肉親を裏切って受けを助けるわけです。 ふたりで逃亡して行くのも萌えですが、この場合、受けは攻めとは別の男、西側にいる攻めBに会いたくて国境を越えようとしていたというのもいい。 三人は幼馴染みだったりして、攻めAも、受けの気持ちが自分には向かない事を知っているし、受けも攻めAの気持ちを知っている。 で、 ガチャガチャと牢獄の鍵の開けられる音に、また取り調べかと瞼を開けるのも億劫に横になったままでいると、 「ヘルムート、ヘルムート!」 良く知った声が名を呼んだ。 「何しに来た?」 幼馴染みのマイヤーだった。 「早く、逃げろ。」 「放っておけよ。」 ヘルムートは抱き起こそうとする手を振り払って言った。 「お前、裏切り者にるなる気か?とっとと帰れ。」 「もう手遅れだよ。」 マイヤーはニヤリと笑って、血の付いたナイフを見せた。 「殺っちまった。看守を数人。一緒に逃げよう。さっ、早く!ルートは確保してある。」 思うように立てないヘルムートにマイヤーは肩をかして歩き出した。 「無理だろ。これじゃ。やっぱり俺は残るからお前だけ行けよ。」 「ヘルムート、お前が生きなきゃ意味がないんだ。」 そして、 逃亡途中、盗んだ軍用車の中で昔の思い出を語り合ったり、ふと二人黙り込んで目を合わすも、すぐに互いに違う方向を眺めたり、でも、お互いの胸の思いは語らない。語ってもどうにもならず、互いを苦しめるだけだということは痛いほど分かっているから。 ふと、マイヤーが言う。 「俺、馬鹿だよな。」 「うん。」 そして、また沈黙。 どうにか国境を越えると、マイヤーはヘルムートの手を握って言った。 「じゃあな。ここからはお前が一人で行け。」 なんとなく予測していた言葉に 「ああ。」 と、答えて、そして、ヘルムートはマイヤーを抱き締めた。 今、越えた国境の向こうから銃声が響くのが聞こえた。 暫く、そうしていた。やがて、マイヤーは涙に濡れたヘルムートの頬を親指で拭い、 「ごめん!」 と、唇に数秒間のキスをすると、顔をそむけ、背を向けて歩き出した。 その背中にヘルムートが言った。 「お前は何処へ行くんだ?」 マイヤーが、振り返らずに答えた。 「さあな。」 少し、その背中を見送っていたヘルムートは、遠ざかって小さくなった人影に叫んだ。 「一緒に行かないか?」 背中から答えが返ってきた。 「Auf Wiedersehen!」 ヘルムートも満身の思いを込めて同じ言葉を返した。 「Auf Wiedersehen!」 『また会おう!』の意味を持つ、ドイツ語のさようならを。 ----   [[目の下に隈>4-709]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: