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Now, I wanna be your........! ---- お隣に住む外国人は、さっぱり日本語を覚えない。 なんでも、どえらい外資系の会社の社員らしく、二つ返事でオーナーが部屋を 貸したのだそうだが、雇われ管理人の俺としては、言葉が通じないので、何を しているのかはさっぱり分からない。 しかし、異文化交流とでも思っているのか、俺に、頻繁に話しかけてくる。 最近では、朝食と夕食を俺が作り出すと、インターフォンを押して、一緒に ゴハンを食べていくようになった。 外国人というのは、こんなにも強引で図々しいものなのか。 でも、家賃を持ってくる時に、大きなプレゼントをいくつも買ってくるので、 多分下宿か何かと勘違いしているのだろう。"I love you."と頻繁にささやいて くるので、親愛の情は持っているようだし。まぁいいか。 "Oh,delicious. Nice tasty." そして今日も、俺の家で刺身を食べながら、日本酒を飲んでニコニコしている。 「おいしいか」 言葉が分からないが、笑っているということは美味しいのだろう。 俺は、外国人が持ってきたワインを飲みながら、空になった外国人のオチョコに、 日本酒を注ぎ足した。 なるほど、白ワインと刺身があうというのは、本当なのか。確かにおいしい。 目の前でクツクツ煮たっている鍋も、そろそろ食べごろだろう。 俺は、「食べようかー。何が食べたい?」と言って、外国人の前に置いていた器を 取るよう、手をだして促した。すると、外国人はすっかりだまりこんだ。そして、 俺の手をガッシリと握った。 「ん? 何だ? 鍋はまだ食べたくないのか?」 外国人は、何か切羽詰ったような顔をして、俺を見ている。何か俺の顔を見ながら 早口で喋っているが、残念ながら、何を言っているか分からない。何だ。お前の 嫌いなタコとかは、鍋には入ってないぞ。違うのか。そうじゃないのか。 "Now, I wanna be your........! " 知っている単語が、俺の耳に飛び込んできた。 あぁ、そうか。こいつの言いたいことは、これだろう。 「分かった。白ワイン飲みたいんだな。ヒラメの刺身に白ワイン、確かにおいしいもんな」 外国人は、ほっとしたのか、がっかりしたように、俺の手を離した。子供のようだ。 グラスを出して、白ワインをついでやると、一気にそれを飲み下す。 「がっつくなよ。ゆっくりやろうぜ。ほら、鍋が煮えすぎちゃうぞ」 もう一杯ついでやって、グラスをあわせると、目元を赤くして、瞳をうるうるさせた外国人が 俺をじっとみていたので、もう一回「乾杯」とグラスをあわせた。 翌日から、英和辞典を持って、外国人はゴハンを食べにくるようになった。 「ゴハン………オイシィ?」 「あぁ、おいしいか。ありがとう」 「But…no…ah…シカいシ、わたし……………ホシイモ?………………アナタの……コンコロ」 「ん? ホシイモ? あぁ、俺が食べている煮物のことか? 芋の煮っころがしだろ。  食べたければ、おかわりあるぞー」 うまく意思疎通とれている。 ペラペラと必死で英和辞典をめくっている外国人。 俺も、今日あたり、和英辞典買って、それで会話するかな。 いつか二人ともペラペラになったら、食卓も、もっと楽しくなるだろう。 ----   [[幼稚園からの付き合いで、30歳になる今までずっと一緒。しかし片思いしてるのは自分だけ。>4-639]] ----

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