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服屋の店長とアルバイト ---- 「店長…なんですかこの柄…。」 日曜日だというのに、相変わらずこの店には閑古鳥が鳴いている。 店の裏で先日届いた新商品の棚卸しをしながら、俺はため息をついた。 「それ可愛くない?うさちゃんにー、リボン付いてんだよーえへへ。」 にへら、と笑いながら店長は嬉しそうに答えた。 今回届いた新商品は七つ。その全てにリボンやらフリルやら、 可愛らしい動物達やらが散りばめられている。 「…えっと、確認しますがこのお店って対象は20代男性でしたよね?」 「うん。」 「今度からレディースも扱うという予定でも?」 「ないね。」 「じゃあ子供服?」 「それもない。」 「………だったらやはりこの服はいい大人の男が着る前提で仕入れた、と?」 「そゆことー!」 なんの悪びれもなく頷く店長に、俺はもう一度大きなため息をついた。 「先月はいきなり、時代はパンクだよ!とか言い始めたと思ったら、今月はこれですか…。」 「透くん怒ってる?」 「別に怒っちゃいませんけど。ここは店長のお店だし、店長の好きなようにやればいいと思ってます。 …ただ、先月の売り上げも厳しかったし、これじゃあ今月も大変なんじゃ…。」 この店が毎月赤字続きである理由は、商店街の片隅という立地条件の悪さもあるが、 何より店に置いてある商品の系統が見事にバラバラなことにあると思う。 しかもその中のどれを取っても、デザインが奇抜で日常生活では使えないものばかりだ。 「いつも困らせてごめんね。」 「別に、いいですけど…たまに狂ったように買ってく変わり者もいますし。」 「へへー今回はね、新作が売れるように、俺自身も着てみたんだよー!」 そう言いながら店長は、うさぎプリントのフリル付きTシャツを自慢気に見せた。 「いや最初から気付いてましたが、…なんか店長無駄に似合いますよね。」 「そうかなー?透くんも着る?」 「遠慮しておきます。」 すっぱりと断ると(だってそんなファンシーなTシャツ着て働けないし)少ししょんぼりした店長が レジから出て近づいてきた。 「かわいいんだよー?うさちゃんだよー?フリルだよ?」 「店長ならまだしも俺みたいなでかい男が着たらちょっとしたホラーでしょ。」 「えーかわいいと思うんだけどなー。」 やいやい言ってる店長を気にせずに、座ったまま棚卸しの作業を続けていると、 背中にズシリと重みを感じた。そしてギュッと回される細い腕。 「あーでもやっぱり透くんくらい筋肉あったらこのTシャツ入んないかなー?」 「ちょっと何やってるんですか……なんか、なんかいい匂いする。」 「おー!わかった?今日はかわいい洋服に合わせて、かわゆい香りを付けてみましたー!」 「はぁ。」 「どうかなどうかな?いい感じ?」 「………甘ったるい。」 「えー。いい匂いだと思うんだけどなー。」 「と、とりあえず重いから退いてください。ちょっと俺煙草吸ってきます。」 まだぶーぶー言っている店長を無理矢理引き剥がして、俺は急いで外に出た。 時給630円(たまに出ないことも有)のこのバイトはまだまだ辞められそうにない。 ----   [[うだつのあがらない中年男×才気鋭い孤独な少年>18-759]] ----

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