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片思い同盟
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空気が乾燥しているのか喉が少し痛い。
誰もいない教室。静まり返った空気に咳払いが響く。
並んで座っている級友が照れ臭そうに笑う。
視線の先は俺じゃない。とても穏やかな眼差しだった。
「望はこれっぽっちも無いけどな」
放課後、いつもの雑談は教室から人がいなくなるにつれ、思わぬ方向に転がった。
彼が長い間、一人の女性に片思いをしていると打ち明けられた瞬間、
俺はどんな顔をしていたのだろう。
どんな顔だって構わない彼の視線の先に俺はいない。
「でも望は無いんだ。兄貴の彼女だし」
そう吐き捨てた彼に、どんな言葉も届かないような気がして
掠れた声で「そうか」と呟くのが精一杯だった。
「お前はいないの?好きな人」
「いるよ」
「誰?」
「言わない」
「そっか」
「お前と同じだよ。完全な片思い」
「そうか、なら振られた時には慰めてやるよ」
「お前が振られたら俺も慰めてやるよ」
「じゃあ俺達、今日から同盟だな。片思い同盟」
「なんだよそれ」
冗談めかして彼が差し出した右手を軽く叩いて二人で笑った。
その瞬間、止まっていた時間が流れ出したように
廊下の向こうから同級生達の騒がしい声が近づいて遠ざかった。
彼が大きく伸びをしながら「どっちが先に忘れられるか競争するか?」と立ち上がる。
俺は「そうだな」と気の無い返事をしながら彼に倣って体を伸ばした。
忘れる事なんて出来るはずが無い。
今、目の前にいる片思いの相手は何年経っても
いつまでも俺の心に残り続けるだろう。
忘れる事なんて出来るはずが無い。
俺もお前も。
この苦しいくらい真っ直ぐな気持ちは紛れもなく恋なのだから。
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[[表示名>18-669]]
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片思い同盟
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空気が乾燥しているのか喉が少し痛い。
誰もいない教室。静まり返った空気に咳払いが響く。
並んで座っている級友が照れ臭そうに笑う。
視線の先は俺じゃない。とても穏やかな眼差しだった。
「望はこれっぽっちも無いけどな」
放課後、いつもの雑談は教室から人がいなくなるにつれ、思わぬ方向に転がった。
彼が長い間、一人の女性に片思いをしていると打ち明けられた瞬間、
俺はどんな顔をしていたのだろう。
どんな顔だって構わない彼の視線の先に俺はいない。
「でも望は無いんだ。兄貴の彼女だし」
そう吐き捨てた彼に、どんな言葉も届かないような気がして
掠れた声で「そうか」と呟くのが精一杯だった。
「お前はいないの?好きな人」
「いるよ」
「誰?」
「言わない」
「そっか」
「お前と同じだよ。完全な片思い」
「そうか、なら振られた時には慰めてやるよ」
「お前が振られたら俺も慰めてやるよ」
「じゃあ俺達、今日から同盟だな。片思い同盟」
「なんだよそれ」
冗談めかして彼が差し出した右手を軽く叩いて二人で笑った。
その瞬間、止まっていた時間が流れ出したように
廊下の向こうから同級生達の騒がしい声が近づいて遠ざかった。
彼が大きく伸びをしながら「どっちが先に忘れられるか競争するか?」と立ち上がる。
俺は「そうだな」と気の無い返事をしながら彼に倣って体を伸ばした。
忘れる事なんて出来るはずが無い。
今、目の前にいる片思いの相手は何年経っても
いつまでも俺の心に残り続けるだろう。
忘れる事なんて出来るはずが無い。
俺もお前も。
この苦しいくらい真っ直ぐな気持ちは紛れもなく恋なのだから。
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[[愛させて>18-669]]
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