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もう着ない制服。 ---- ハンガーにかけられて白い壁に下がっている、黒いブレザー。 あちこちほつれて、黒ずんだしみまであるのは、3年間のやんちゃの賜物だ。今更だけど……反省はしてる。うん。 3年なんて、正確には2年と7ヵ月。卒業まではあと5ヵ月もあるんだけどね。 「ホントにもう学校に来ないつもりなの、先輩」 傍らで1つ年下の男がすねた顔をする。 んなでかい図体でやっても可愛くねぇ、と言えないのは惚気だ。 「行っても意味ねーしな」 「でも、さみしいよ」 「別に学校いたっていっつも会ってるわけじゃねぇじゃん。学年違うし」 「うんでも」 寂しいんだよ。 吐息だけのような囁きが、耳をくすぐった。 保健委員のこの後輩と、いろんなしがらみをぶっ壊して一緒にいると決めたとき、 もうこんなラストは予測できてたんだけど。 「ほんとうに、やめちゃうの」 あ、こら。泣くなって。 おれのとはタイの色が違うだけの、ブレザーを着た肩を抱き寄せる。 「……どうせ卒業までもたねーしな」 1年と7ヵ月ぶんの年華を経てよれた制服ごしに見た、おれのブレザー。 着たのは結局365日にも満たなかった。 なのに、頻繁にぶっ倒れてひっかけたり、喀血したりで大分汚れた。 それでも、おれの匂いと、……この男の匂いがするもう着れないブレザーを、手放さずにここへ持ってきたのは。 「学校、終わったら、オレ、毎日来るから」 うん。 泣いてるみたいなかすれた声に、おれの返事は息だけだ。 「朝も、会いにくる」 お前が来るまで、おれはあのブレザー抱えて、お前の匂いを抱いて眠るんだ。 もしお前がいないときに、意識が途切れてしまっても、寂しくないように。 ----   [[皇帝ペンギン>4-419]] ----

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