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変人×天然 ---- 週末、同僚達のおざなりな誘いを、毎度のように断って奥田が独り呑みに行こうとすると、これまた毎度のように今年入社したばかりの新人の芳川がまとわり付いて来た。 「奥田さんも一緒に行きましょうよー。」 後ろに手を振って、歩き去ろうとしてもなお、 「じゃあ、僕も連れて行って下さいよ。お邪魔はしませんから。」 と、しつこくまとわり付いて来る。最初は、冷たくあしらっていたのだが、今は、好きなようにさせているから、週末はいつもふたりで飲んでいる。 以前は、独りで呑むのが好きだった。この時間を誰にも邪魔されたくないと思っていた。 周りの者達も、そんな奥田を変わり者だと受けとめていたから、誰も気にもしなかったし、トラブルもなかった。 それは、今でも変わりないのだが、芳川だけは別だ。 奥田にまとわり付くのを、周りにからかわれても、 「だって、奥田さんが好きなんです。」 と、さらりと言ってのけ憚らない。 奥田も周囲の目を気にする方ではないが、その点だけは芳川も一緒らしい。最も、芳川の場合は気にしないと言うよりも、そうした思考概念をそもそも持ちあわせていないと言う方が正しい。 それだから、お邪魔しませんとは言っても、芳川が気を使っておとなしく飲んでいるはずはなく、よく喋り、煩くあしらうと目に涙をうるうるさせて、人前で今にも泣きそうになるから、好きにさせておく他はない。 誰にも邪魔されたくなかった筈の時間のはずが、芳川のお守りをする時間になっている。だが、芳川は奥田にとって実家で飼っていたポメラニアンのようなもので、まとわり付いて離れないのに、嫌な気はしないのだ。 今夜も、芳川は楽しそうに飲み、すっかり酔っぱらって帰りたくないと言うから、奥田はアパートに芳川をお持ち帰りする羽目になった。 最近は、このパターンが増えてきた。だんだん増長してきているのかもしれないが、それも仕方がないかもしれない。酔っ払った芳川を一人で帰す方が、精神安定上好くないからだ。 (ポメから昇格してきたか。) 奥田は、「好きです」などと呟きながら、抱きついて寝入ってしまった芳川をながめながら思った。 天然なのか計算なのかだんだん分からなくなってくる。 なんだか、すっかり芳川のペースにはめられてしまった感じだが、それでも、このまま引きづられてゆくのも悪くはないかと思い始めた。 とりあえず、スヤスヤと眠る芳川の頬でもつついてみた。 ----   [[兄弟子×弟弟子>4-389]] ----

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