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駅までチャリで15分。 時計は午後6時48分。 <今日午後7時の新幹線。> メールが届いたのが、今朝。 無視するつもりだった。 行かないつもりだった。 『忘れてやるよ、お前のことなんて』 心にもない言葉が、ずっと枷だった。 よりによって最後の日に喧嘩した。 理由は忘れた。たぶん些細なこと。 苛立っていた俺は、酷い言葉ばかり吐いた。 苛立っていたわけは、子供のような独占欲。 …離れたくない。 ただ、それだけ。 『忘れてやる』と言ったくせに、ちっとも忘れられなかった。 嘘。あいつの笑顔やふざけた顔が、全然浮かんでこなかった。 最後に見た泣きそうな顔だけが、脳裏に焼き付いたまま離れなかった。 …俺の記憶の中のあいつは、ずっと泣きそうな顔のままかもしれない。 絶対、嫌だ。 遠くで列車到着のアナウンスが鳴る。 階段を一段飛ばしで駆け上がる。 必死で切符のボタンを押す。 改札を抜けて疾走する。 発車ベルが鳴って、 嫌だよ待てよ、 まだ俺は、 まだ、 、 ぼやけた視界の向こうに、 遠ざかる新幹線が見えた。 …おしまいだ、 まにあわなか、 「おせえよ」 お前待ってたら行っちまったじゃねえか。 息を切らす俺に、こいつは不機嫌そうに、 だけど明るい声で、そう言って、笑った。
タイムリミット ---- 駅までチャリで15分。 時計は午後6時48分。 <今日午後7時の新幹線。> メールが届いたのが、今朝。 無視するつもりだった。 行かないつもりだった。 『忘れてやるよ、お前のことなんて』 心にもない言葉が、ずっと枷だった。 よりによって最後の日に喧嘩した。 理由は忘れた。たぶん些細なこと。 苛立っていた俺は、酷い言葉ばかり吐いた。 苛立っていたわけは、子供のような独占欲。 …離れたくない。 ただ、それだけ。 『忘れてやる』と言ったくせに、ちっとも忘れられなかった。 嘘。あいつの笑顔やふざけた顔が、全然浮かんでこなかった。 最後に見た泣きそうな顔だけが、脳裏に焼き付いたまま離れなかった。 …俺の記憶の中のあいつは、ずっと泣きそうな顔のままかもしれない。 絶対、嫌だ。 遠くで列車到着のアナウンスが鳴る。 階段を一段飛ばしで駆け上がる。 必死で切符のボタンを押す。 改札を抜けて疾走する。 発車ベルが鳴って、 嫌だよ待てよ、 まだ俺は、 まだ、 、 ぼやけた視界の向こうに、 遠ざかる新幹線が見えた。 …おしまいだ、 まにあわなか、 「おせえよ」 お前待ってたら行っちまったじゃねえか。 息を切らす俺に、こいつは不機嫌そうに、 だけど明るい声で、そう言って、笑った。

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