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着うた×着メロ ---- 俺は着メロ。この業界じゃ俺を知らぬものはいない。 老若男女問わず俺は落とされ、求められ、鳴かされてきた。 言わば百戦錬磨といったところか。 そう、俺はずっと、俺のまま、俺が一番のはずだった。 それが正しい世界のカタチだったのだ。 しかし、最近何だか指名が減ってきている気がする。 今日もだ。人間達は迷った挙句に俺を避ける。 うそだろ、なぜだ?なぜ俺を選ばない!! 「あ!着メロ先輩、すいませんお先です!」 すぐそばから無邪気な声が聞こえた。 「・・・着うたか。最近忙しいんだな」 横目でにらんだ先には、 のほほんと喉の調子を整えている新参者がいた。 「いえ、ぼくなんか、まだまだ先輩には及びませんから!  がんばらなくっちゃ!」 「ぼく、先輩みたいになるのが夢なんですもん」 にっこりと、奴は笑いかける。 はしゃいだ無垢な顔。 「ふん、お忙しいようで、いいこったね」 でも俺はついつい悪態をついてしまう。 そうだ、すべての元凶はこいつなのだ。 「先輩??」 きょとんと覗くその目が、子供っぽく光っている。 俺はついつい目をそらしてしまう。 しかしそうやってそらした後に、妙にそわそわしてしまう。 俺はコイツが邪魔でしょうがないのだ。 そうこうしている内に俺にもお呼びがかかる。 俺はやっとこいつのことを考えないですむようになる。 「なんだよ、ほらお前も呼ばれてるぞ。行けよ。早く。」 「あ、はい、でも先輩最近何だか・・・」 「なんだよ、うぜぇな」 奴は一瞬ビクッと体を触れさせると、泣きそうな目をして俺から離れた。 必要以上にこいつを冷たく突き放してしまう。 だって俺はこいつが邪魔なんだ。 なのにこいつは俺にひどくなついてやがる。 子犬みたいにまとわりついてくる。 沈黙がつづく。 なんなんだよこの罪悪感は。 俺は理不尽ないたたまれなさに耐えられなくなる。 「早く行けよ。」 「・・・はい。行ってきます。」 律儀にも一礼すると、奴はとぼとぼと歩き出す。 ・・・なんなんだよもう。しょうがねぇな。ほんとしょうがねぇよ。 俺の態度ひとつで、泣きそうになることないじゃないか。 なんだか変におかしくなる。 しらないうちに体が動いて、俺は思わず奴の背中に手を伸ばした。 「おい。」 「え?」 驚いて振り向いたその頭をなでて、髪を指ですいてやる。 目じりに滲んだ涙をぬぐって、指先で喉に触れてやる。 「・・・ま、あれだ・・・そのお前もがんばれよ。」 奴は安心したように頬を緩める。いつもこうなのだ。 俺はこいつを拒めない。最後にいつもこうしてしまう。 自分で泣かせておきながら、どうにも耐えられなくなるのだ。 「じゃ、ぼく行ってきますからー!」 すぐに笑顔に戻り、元気に駆け出していく奴を見送りながら、 俺は、出会ってから何度目かのため息を、深くはきだすのだった。 ----   [[妖怪>3-849]] ----

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