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「3-769」(2010/03/09 (火) 13:13:04) の最新版変更点
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またもう一本煙草に火をつけるのは、忘れることを習う為
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暗闇の中にあってなお浮き上がるような黒髪。
淡い茶色の瞳。薄い唇。
「愛してるよ…」
耳朶に唇を寄せて囁くと、受はふと息を呑み、俺の肩に手を這わせた。
やがて訪れる開放感。
呼吸を整える暇さえ惜しんで深い口付けを交わす。
「僕もあいしてるよ…」
離れた唇がその言葉を紡いだ瞬間、俺の世界が壊れる音がした。
闇に慣れた目に映るのは、褐色の髪。
淡い緑の瞳。淫乱さをかもし出す小さく厚めの唇だ。
「…ひどいや。殴ることないのに」
恨みがましい、癇に障る声。
「あいつはそんな事言わねえんだよ。そんな目はしねえんだよ。
おまえは違いすぎんだよ!!」
もう一発殴って、ベッドから転がり落ちた淫売の腹を蹴る。
ベッドに腰掛けた体勢からとはいえ、腹に入ったその蹴りは相当効いたろうに
淫売野郎はゲタゲタと狂ったように笑い転げやがった。
「黙れよ」
「あっはは!まだ足りない!? 足りないよね!あははは!」
腹を抱えて笑いながら、野郎はベッドサイドのシガーケースを取り、
俺に差し出した。
「ほら、もう一本イケよ。まだあいつがいいんだろ?」
拳を握り締めたのは、一瞬だった。
俺はケースに手を伸ばす。
「どんどんイケよ。誰が誰だかわかんなくなるまでさ。
誰だって同じに見えるまでさ?
思い出すから、忘れられないから苦しいんだろ?ホラ」
手巻きの煙草を一本とって、サイドテーブルのライターを掴んだ俺をあざ笑う声が
足元から這い上がってくる。
「あははははは!! ねえ、あんたにはオレがどんな風に見えてんの!?
ねえ、ねえ!ねえ!! あーっははははは!」
またもう一本煙草に火をつけるのは、忘れることを習う為。
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[[またもう一本煙草に火をつけるのは、忘れることを習う為>3-769-1]]
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