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元カノの元彼 ---- 「あ…」 「あ、こんにちは…」 いつもの散歩コースの帰り道、懐かしい姿を見つけ思わず声を上げてしまった。 相手もその声に気づいて小さく会釈を返す。 「コロンちゃんのお散歩…ですか?」 目の前の男性はずり落ちたメガネを直すと、俺の連れていたポメラニアンを遠慮がちに撫でた。 少しだけ戸惑いの入った声。 当然だ。俺の隣に居るはずの彼女の姿がないんだから。 「ええ、飼い主が育児放棄したもので。」 吐き捨てるようにそう呟くと、彼は元々大きな目をますます大きくする。 「別れました…ってかフラれました」 「あ…そう、ですか…」 俺の言葉に彼は目を伏せて、鼻先を指でこする。 「彼女、気分屋でしたもんねー…」 いろんな感情が篭った複雑な表情と、すべてを知っている声。 「はは…貴方から無理やり奪っといてこのザマですよ」 自嘲気味に、大げさに笑ってみせると、彼は悲しそうに眉をひそめた。 そしてまたいつの間にかずり落ちていたメガネを直すと、眉を寄せたまま小さく微笑む。 「お似合いでしたのに、残念です」 「!!」 罵声の一つや二つ浴びせられるかと思った。 それぐらい当然なことを彼にしたのだから。 それなのに彼は俺を慰めるような表情で、優しく犬を撫でていた。 ああ、そうだ。 この人は優しい人なんだ。 彼女が別れ話を切り出した時だって、この人は眉をひそめたまま小さく笑って…。 「ぅ…」 「え!わ!だっ大丈夫ですか!?」 あっという間に視界がゆれて、鼻がツキンと痛む。 「ご…ごめ…ごめんなさい…おれ…お…」 言葉を紡ぎたくても、喉が揺れてうまく声が出せない。 零れ出るのは涙だけだ。情けない。 「辛かったですね。大丈夫、貴方は何も悪くない。」 歪む視界の中、彼は微笑んだまま俺の背中を優しく叩く。 「よかったらココアでも飲みませんか?  悲しい時は甘いものが一番です。温まりますよ?」 彼はそういうとコンビニの袋から小さい缶を取り出す。 「…すみません、いただきます…」 素直に缶を受け取ると、彼はにっこり笑ってメガネを直した。 「あの、優しくしてもらって…こんな事言うのも失礼ですけど…」 「はい?」 「貴方、お人好し過ぎますよ」 「あーそれが原因で振られてんですよねー私」 彼は照れたように頭をかく。 「まあ、そこが貴方のいい所なんでしょうけど」 「そ、そうですかね?」 「はい、おかげでなんか、吹っ切れました。新しい恋が出来そうです」 正直、さっきまでフラれたショックを引きずってたけど、なんか新しい扉を開けそうだ。 俺と、彼をフッてくれた彼女に少し、感謝、かな。 ----   [[801チンピラ>17-789]] ----
元カノの元彼 ---- 「あ…」 「あ、こんにちは…」 いつもの散歩コースの帰り道、懐かしい姿を見つけ思わず声を上げてしまった。 相手もその声に気づいて小さく会釈を返す。 「コロンちゃんのお散歩…ですか?」 目の前の男性はずり落ちたメガネを直すと、俺の連れていたポメラニアンを遠慮がちに撫でた。 少しだけ戸惑いの入った声。 当然だ。俺の隣に居るはずの彼女の姿がないんだから。 「ええ、飼い主が育児放棄したもので。」 吐き捨てるようにそう呟くと、彼は元々大きな目をますます大きくする。 「別れました…ってかフラれました」 「あ…そう、ですか…」 俺の言葉に彼は目を伏せて、鼻先を指でこする。 「彼女、気分屋でしたもんねー…」 いろんな感情が篭った複雑な表情と、すべてを知っている声。 「はは…貴方から無理やり奪っといてこのザマですよ」 自嘲気味に、大げさに笑ってみせると、彼は悲しそうに眉をひそめた。 そしてまたいつの間にかずり落ちていたメガネを直すと、眉を寄せたまま小さく微笑む。 「お似合いでしたのに、残念です」 「!!」 罵声の一つや二つ浴びせられるかと思った。 それぐらい当然なことを彼にしたのだから。 それなのに彼は俺を慰めるような表情で、優しく犬を撫でていた。 ああ、そうだ。 この人は優しい人なんだ。 彼女が別れ話を切り出した時だって、この人は眉をひそめたまま小さく笑って…。 「ぅ…」 「え!わ!だっ大丈夫ですか!?」 あっという間に視界がゆれて、鼻がツキンと痛む。 「ご…ごめ…ごめんなさい…おれ…お…」 言葉を紡ぎたくても、喉が揺れてうまく声が出せない。 零れ出るのは涙だけだ。情けない。 「辛かったですね。大丈夫、貴方は何も悪くない。」 歪む視界の中、彼は微笑んだまま俺の背中を優しく叩く。 「よかったらココアでも飲みませんか?  悲しい時は甘いものが一番です。温まりますよ?」 彼はそういうとコンビニの袋から小さい缶を取り出す。 「…すみません、いただきます…」 素直に缶を受け取ると、彼はにっこり笑ってメガネを直した。 「あの、優しくしてもらって…こんな事言うのも失礼ですけど…」 「はい?」 「貴方、お人好し過ぎますよ」 「あーそれが原因で振られてんですよねー私」 彼は照れたように頭をかく。 「まあ、そこが貴方のいい所なんでしょうけど」 「そ、そうですかね?」 「はい、おかげでなんか、吹っ切れました。新しい恋が出来そうです」 正直、さっきまでフラれたショックを引きずってたけど、なんか新しい扉を開けそうだ。 俺と、彼をフッてくれた彼女に少し、感謝、かな。 ----   [[元カノの元彼>17-779-1]] ----

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