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クリーチャーの恋
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「あいつ、……らしいぜ」
「マジかよ、さすが……だな」
「…んとだよ。あーあーゼッタイ俺かなわねー。でも俺たかが任務で死にたくねーし…じゃなくて良かった」
「シッ…聞こえるぜ」
ガヤガヤと雑音が鳴る。
人間じゃないと言われることにはもう慣れた。自分はほんの少し、身体能力が高かっただけだ。
ほんの少し、人よりも、生きている意味が見つからなかっただけだ。
三回ノックして、執務室のドアを開ける。ここだけ息が楽だ。空気が柔らかい。
「ボス。ただ今、任務から戻りました」
「お帰り」
「ご報告を」
「うん。それより――こっちへおいで。血が出てる。誰の血?」
手を取られて俯く。視線を落とすと、胸のあたりから下肢にかけて、べったりと血がついていた。
ほとんどはかえり血だが、自分のものもあるかもしれなかった。
「痛かった?」
「いえ……」
「そう」
手を、強く引かれた。そのくらいではびくともしない体が勝手に傾いて、容易にボスに抱きとめられる。
ほとんど年が変わらないのに、自分とボスは随分と違う。
「体温が高いね。子供みたいだ」
「……」
「お前のウワサを聞いたよ」
「化け物みたいだってことでしょう」
「確かに、獣みたいだな」
ガツンと頭を殴られた気がした。ドクドクと心臓が動き出す。ボスの前でだけ痛みを感じる。
「危ないことばかりしたがって、なかなか手に負えない。てなづけるにも一苦労だ」
「そんな…」
「でもお前が化け物なら、俺も化け物だね。人を殺めてもなんとも思わない」
それは違う。ボスは化け物なんかじゃない。
「心臓が動いてる」
胸に手をあててボスが呟く。胸が痛い。声が出ない。
この気持ちが恋であると気付かないまま、長い時間、そうしていた。
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[[腹痛>17-519]]
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