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<p>半袖と長袖</p> <hr /><p>「あーーー!!!」<br /><br /> 今まさに校門をくぐろうとした所。<br /> 大声のした方に振り向くと、井上がバカ面で大口を開け、俺を指差していた。<br /> その指から続く腕は、涼しげな半袖シャツに繋がっていて、周囲の長袖シャツの中、<br /> 明らかにその存在は浮いていた。<br /><br /> 「ころもがえ!バッカお前今日から衣替えじゃん!なんで言ってくれなかったの!?」<br /> 「……今日から衣替えだぞ井上」<br /> 「今言ったってしょーがないじゃん!もーバカバカバカ!」<br /> バカにバカと言われる屈辱に耐えながら、下駄箱への道を歩く。<br /> 「取り替えてえ~俺のシャツと木内のシャツ取り替えてえ~」<br /> 無視をしていたら今度はシャツを引っ張り始めた。ズボンから引きずり出された<br /> 俺のシャツはもうしわくちゃだ。<br /> 「……しわになる。離せ」<br /> 声と同じく頭ひとつでかい井上の体躯を手のひらで押しのけ、上履きに履き替えると<br /> 教室とは逆の方向へ歩き出した。その横をわあわあと騒ぎながら井上がついてくる。<br /> 周囲の目がくすくすと笑っていて痛い。<br /><br /> 「大体お前、俺のシャツ小さくて着れないだろ」<br /> 「着れるって大丈夫!っていうか今半袖着てるよりマシだし俺が!しんゆーだろ!」<br /> 「俺は「衣替えに気づかず半袖を着てきたバカ」にはなりたくない」<br /> 「バカ!ひっでえお前今バカっていった!?言葉の暴力だ!俺はきずついた!<br /> そんがいばいしょーをようきゅうする!」<br /> 「損害賠償くらい漢字で言え、半袖バカ」<br /> 「バカっていうなー!!」<br /><br /> わあっと大口を開けた瞬間、鍵のかかっていない空き教室の扉を開け<br /> 井上を突き飛ばした。<br /><br /> 「うわっ!?っぃで!……な、なにすんだよ~」<br /><br /> 面白いくらいに転がった井上と共に教室に入ると、内側の鍵をかける。<br /><br /> 「……わかった、替えてやるからシャツ脱げよ」<br /> 「えっ!……えー……いや、それは嬉しいんだけど、その、木内さん……<br /> 目がエロい事になってるんですけど……?」<br /> 「気のせいだろ。授業始まるから早く脱げよ、見ててやるから」<br /> 「いっいやいや見ててはくれなくていいですから!」<br /> 「脱がせてやろうか?」<br /> 「いいいいやいやいや!!」<br /><br /> -------------------<br /><br /> 3時間目の放課<br /><br /> 「おー井上!どこ行ってたのかと思ったら、結局木内に取っ替えてもらったんかよー」<br /> 「でもちょっとちっさくね?半袖の方がいんじゃねーの?」<br /> 「ううううるさい!いいんだよこれでっ痕が見えんだから!」<br /> 「痕?」<br /> 「ななななんでもねーよ!!」<br /><br /> 「木内もぶかぶかでかわいーな、女の子みたいじゃん」<br /> 「ホントだよな~上級生にいたずらされないように気をつけろよ~」<br /> 「そうだな」<br /><br /> ふと視線が合うと、先程挿入した時と同じように、<br /> びくりと身体を強ばらせた井上を見て、笑みが浮かぶ。<br /><br /> 「どんなにバカでも、これでもう明日は忘れないだろ?」<br /><br /> 周囲に聞かれないように囁くと、いつもは何か言い返してくる井上が<br /> 顔をまっかにして睨みながらも無言で頷いた。</p> <hr /><p><a href="http://www19.atwiki.jp/910moe/pages/677.html">兄貴に彼女ができました</a></p>

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