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童貞攻め ---- 前から、隙あらば下らないセクハラを仕掛けてくる奴だった。 元からシモの話題に抵抗が無い性格ではあるらしいが、 抱きつきや押し倒し等の身体接触を伴なうのはもっぱら僕に対してだけで、 なので、まあ、つまりそういう事なのだろうと思う。 ぶっちゃけ、週8ペースで「好きだ」と言われているし。 (大抵はその後にヤらせろ・揉ませろ・吸わせろと続くのだが) 無論、そう言った戯言に対しては、 実力行使や百倍濃縮した皮肉でもって応対してきた。 早々お安い態度なんぞ取ってたまるか。 ──とはいえ。 僕自身、奴の好意に対してはまんざらでもないのが本音の所ではある。 問題は衆目をはばからぬ過度のスキンシップや下ネタなのだが。 まったく忌々しくも厳然たる事実だ。 ……そうでもなければ、 奴が触れるだけでこんなに頬が熱くなる筈がない。 そんな訳だから、こうなるのも時間の問題だったんだろうなあ、 と、どこか他人事のように現状を分析している自分が居た。 まず現状を説明すると、 僕は例の奴と二人きりの部屋で、ベッドの上に並んで座り、 かれこれ十数分はねっとりとキスをしていた。 ついでに言えば今夜一杯は誰の邪魔も入る可能性は無い。 まるでおあつらえ向きなシチュエーション……というより 奴自身がそういう日であることを見越して仕掛けてきたようだ。 誘いに乗った以上、こちらも腹を決めている。 今夜恐らく僕らは一線を越えるのだろう。 と、思っていたのだが。 そこから先へなかなか移行せずに 服の上から胸や背中を曖昧に撫でさするばかりだ。 ──ようやくシャツの中へ潜り込ませてきた。 が、その手つきもいやにぎこちない。 こちらを気遣っているのか?いやそれにしても。 こっそりを目を開けて奴の顔を伺ってみれば、 これはもう面白いくらいに狼狽えているのが見て取れた。 まさかとは思うが、お前童貞か? まだるっこしい駆け引きも面倒なので直接聞いたところ、 面白いくらい挙動不審になった。図星か。 図星だな。念を押したところおずおずと頷いてきた。 ……本当に、仕方ない奴め。 深く深くため息をつく。 そして地蔵のように動かなくなった奴を脇へと押しのけた。 当人は僕のそんな素振りにショックを受けて涙目になっているが、 それでも大人しく退いてくれる。まあ状況が状況だからな。 しかしどうしてそのままベッドを降りようとしてるんだ? 背後へそう突っ込みを入れた。 へ?と意外そうな顔でこちらを振り向く奴を、 半ば強引にベッドへ引っ張り上げてとっととその上へ馬乗りになる。 お前が未経験なら僕がリードすれば済む話だろ? そう伝えたところ鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。 え、ってことは、初めてじゃないの? 間抜け面を晒して心底意外そうに聞くものだから、 さすがの僕も少し気まずくなって、おずおずと頷いた。 本当は、こんなにまっとうに暮らせるようになったのって すごく最近のことなんだ。ずっと言いたかったけれど、 恐ろしくて言い出せなかった事実に今更思い至る。 「──幻滅したか?」 ごく軽い調子で聞いたつもりだったのに、 実際に口から出てきた声は想像以上に震えていた。 「そんな事!」 がばりと起き上がって抱きしめられた。 不意打ちに息を詰まらせた僕に奴が気づいて開放されたが それでも、伝えたかった気持ちは確かに理解できた……と思う。 どちらにしても、今しがた芽生えかけた疑心や負い目が、 己の中から綺麗さっぱり消えてしまった。 我ながら単純な、と思わなくも無い。 こいつと関わる内に僕まで阿呆になりつつあるのか。 「二人にとって一番最初だから、 出来るだけ優しくしよう、って考えてたのにこれだからなあ。 ごめんな?お前にはいっつも世話かけさせるなあ……」 そんな、奴のいたわる様な言葉と表情を見下ろしていたら 久しく忘れていた何かが胸を衝いた。 それと共にうっかり口元が緩む。 目を丸くした奴が何事かを言いかけたが、 それを遮るように、今度はこちらから口づけを落としてやった。 ----   [[仮性包茎を気にするドSな上司>18-249]] ----

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