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世界の終わりの高校生 ---- もうずっとここに座って海を見ている。 色々考えたけれど、もう立ち上がるのさえめんどくさい。 誰かが呼んでいる気がする。何を言っているかは分からない。 もう誰もいないはずなのに。 地平線から人の影が出てきて、形をなしたと思ったらこっちに向かってきた。 ここは僕しかいないはずなのに。 不安になって、思わず立ち上がる。どことなく見覚えのある男が、手を伸ばした。 「お前を迎えにきた。こっちへおいで」 いやだ。あんたは、僕を海へ引きずり込む気だろう? そばに来るな。 「ここにいたって意味がない。助けにきたんだ」 その声は暖かく、優しかった。彼が僕を呼んでいたんだろうか?  でも、そこは深く暗い海じゃないか。 「この世界にはお前しかいない。独りぼっちだ。何も始まりゃしない。分かってるんだろう?」 それでいいじゃないか。ここは安心だ。そっちはいやだ。 「大丈夫だから。今度こそお前を守ってやる。お願いだから、戻ってきてくれ」 戻る? じゃあ、一体ここはどこなんだ? 僕のいるこの世界は? 頭がぼんやりとしてきた。彼が僕の手を握り、ぐいと引っ張った。 目を開くと、さっきの男が僕を見下ろしていた。泣いている。 「気がついた! お母さん、彼、意識が戻りました!」 白いベッド。横に点滴がある。母さんが抱きついてきて、体を震わせた。 彼は僕の右手を握ったまま、笑顔で涙を流していた。 「お前はまったく。よかったよ。もう頼むからあんなことしないでくれ」 そうだ、僕は確か、学校の屋上から……。 「お前をここまで追いつめてしまったのも、担任である俺の責任だ。これからは全力で守るよ」 あの声は先生だったんだ。 僕はまた暗くて冷たい世界に戻ってきてしまったらしい。 でも、この手の温もりは、この世界で生きる力を少しだけ、蘇らせてくれた。 ---- [[勤労感謝の日>17-939]] ----

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