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下着の上から
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酒の後の喉の渇きで目が覚めた。
室内が暑くて、エアコンの設定温度を一気に3度下げる。
すぐ横に横たわる大きな寝姿。同僚の鈴木が飲んだ後で泊まっていったのだ。
着替えたTシャツと、トランクスから伸びる重たそうな足。
鈴木と組んで2年目になる。長くとも1年でチームが代わるうちの職場では異例のことだ。
仕方がないだろうと自他共に認める。
「何しろベストコンビだからね、俺と上川先輩は」
自信満々に鈴木が笑う。何言ってるんだ、去年はあんなに不安そうな顔してたくせに。
無理もない、転属してきて、まったく経験のない部署に来て、
面識もなかった俺と組んで、それが噂になるほどの愛想無しと来ては不安にもなるだろう。
うち解けるのに、さほど時間はかからなかった。
人間、相性というものがある。俺と鈴木はよく合った。
人柄が軽快で愛想の良い鈴木と、堅苦しく押しの強い外見の俺という組み合わせは、
奇妙なでこぼこコンビとして、クライアントに受けた。
図や写真は多いがともすれば薄くなりがちな鈴木の作成資料は、
経験で長じる俺が適切な情報を加えることで、完成度を増す。
雰囲気から敬遠されがちな俺が、鈴木の入れる茶々で課内にとけ込めるようになった。
ツーといえばカー。定食屋で黙ってマンガを読む昼食も、社用車の中でする雑談も、
サッカーのひいきチーム、野球の相容れない好みすら、聴く歌まで、
鈴木とはうまく合った。まさにベストパートナーといえた。
業績も上がり、結果2年目のコンビ続投となった。
また一緒にいられる。会議の席で隣の鈴木と目があったら、やっぱり嬉しそうな顔をしていた。
屈託のないその笑顔。気持ちが通じ合う。
一生に何度も出会える相手ではない、と思った。
ずっと一緒に、できることなら3年目も。4年目も。
今、そのかけがえのない相手の唯一の難点に気づいた。
……これが、女であったなら。
いや男だとしても、いっそ公私ともに。一生離れず。もっと側に。もっと親密に。ずっと一緒に。
酔いは冷めていた。初めて、これと思って鈴木の膚を見た。
濃紺の下着のその下なんか、ついさっきまで俺にとって何の意味もないものだったのに。
目をつぶって、明日の鈴木の笑顔を思った。
エアコンが、急激に冷気を送ってくる。
そっと、下着の上から寝具代わりのバスタオルを掛けて、部屋を出た。
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[[下着の上から>17-119-2]]
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