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魔王に育てられた勇者 ---- 彼は世界の運命を変える力そのもの。 彼の背中に印が浮かび上がる時、彼は闇を滅ぼす強大な存在となる。 だが、闇の生け贄になれば最後、逆に闇の力を増大させてしまう。 生まれた日に両親は闇の王に殺され、赤ん坊の彼は簡単に奪い取られてしまう。 王は印が浮かび上がる時まで、よけいな考えをうえつけられぬよう、 彼を隠して大切に育てた。 人々は、彼は両親と共に殺されたものと諦めていた。 彼は何も知らぬまま、いつしか精悍な顔だちのの青年になる。 そして人の姿に化けた王だけが彼の全てだった。 「僕はとうとうあなたの背を越えました。でもあなたは昔と全く変わりませんね」 「私は歳をとらない生き物だからね」 「僕は違うんですか? あなたと僕は違うんですか?」 「お前は最近、何でも不思議がるな。これだから人間は」 王は困ったように彼の頭を撫でる。本当に大きくなったものだ。 もう間もなく、もう間もなくだ。印が浮かび上がる日も近い。 その時心臓をえぐり取れば、王は莫大な力を得ることができるのだ……。 「おいで」 と呼べば、何の疑いもなく、子供のころのように、彼は王に抱きついてくる。 無邪気な顔が王の気持ちを揺らがせる。 彼を殺すことはとても簡単だった。 それは王をとてつもなく苦しめた。 ----   [[妖精>16-959]] ----

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