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死ぬまで黙ってる
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「俺、今度結婚するんだ!」
なんて残酷な宣言。
恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、
こいつは俺にそう告げた。
「どうした?俺に先を越されて悔しいのか?」
冗談じみた口調。
俺の肩を勢いよくたたく。
お願いだから触らないでくれ、頼むから今だけは。
「・・・おい、お前大丈夫か?」
黙りまくっている俺を流石に訝しがったのか、顔を覗き込んでくる。
やめてくれ、泣きそうだ。
目が合った。
俺を心配している目は、結婚報告のためあがったテンションのせいか潤んでいた。
そんな目で俺を見ないでくれ。
「悪い、俺なんかしたか?」
ああ、したとも。
お前は俺の恋を終わらせたんだ。失恋だ。
わかっていた、この恋が成就しないことくらい。
わかっていた。
いつかこんな日が来る事くらい。
わかってはいたが、受け入れられない。
一目惚れだったのに。
仕事をがんばっている姿、その裏に隠された弱さ。
酒に弱いのにいつも飲みすぎて潰れること。
すべてが俺を惹きつけてやまなかった。
俺が一番お前を好きだという自信さえあったというのに。
「いきなりだったもんな、悪い。」
「でもお前に一番に伝えたかったからさ。」
年甲斐もなくしょげる姿に、黒くゆがんだ欲望がわいてくる。
こいつを今連れ去ったらどうだろうか?
思いを伝えて、拒否する事は許さない。
思いのたけをこいつの心に、体に、刻み込んでやろう。
しかし、そんな幸せで非現実的な誘惑はすぐに打ち消される。
こいつを傷つける事なんて俺にはできない。
性別が一緒というだけで、
なんでこんなつらい思いをしなくてはならないのだろう。
「いや、少し驚いただけだ。」
「結婚おめでとう。」
作った笑顔と偽りの言葉の裏で、汚い思いを俺は封印した。
もう、誰にもこの思いは伝えない。死ぬまで黙っていよう。
ただ、そばにいることくらいは許してくれ。
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[[死ぬまで黙ってる>16-609-1]]
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