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はじめてのおつかい ---- はじめて、あの方が一人で買い物へ行きたいと仰った。 幼い頃からボディガード無しには外出できない身分であった彼は、気ままに買い物をするなんて経験は全く無かったのだ。 もっともそんなご身分だからこそ、私が歳近いお目付役としてお近づきになれたのだが。 「欲しい物がおありでしたら、こちらで用意致しますが」 「駄目だ、俺は自分で見て買いたいんだ」 「何故私がお供してはいけないのですか?」 「俺はもう子供じゃない。たまには羽根をのばさせろ。」 結局説得はかなわず、その『はじめてのおつかい』は決行された。 当日は秘密裏に街中にSPが配備される厳戒態勢。 気づかれぬように超小型の隠しカメラ、発信機などが彼の服に仕込まれ、街の防犯カメラなどと連携した監視ルームで、私は彼の動向を見守っていた。 彼と長い時間離れるのはどれ程久々だろうか。正直気が気じゃない。 「…ああ、もう」 彼は服屋でLサイズの服を何着も買い込んでいる。貴方はMサイズじゃないか。 貴金属店や書店などでもどうにか買い物を済ませ、洋菓子店に入ったようだ。 店員と何か話している。少しして店員がケーキに乗せるプレートを持って彼へ見せて、… 私は思わずそこの部分の映像を拡大した。 「…ああ」 何故忘れていたのだろう。 明日は、彼と私が出会ってちょうど10年になる記念日なのだ。
はじめてのおつかい ---- はじめて、あの方が一人で買い物へ行きたいと仰った。 幼い頃からボディガード無しには外出できない身分であった彼は、気ままに買い物をするなんて経験は全く無かったのだ。 もっともそんなご身分だからこそ、私が歳近いお目付役としてお近づきになれたのだが。 「欲しい物がおありでしたら、こちらで用意致しますが」 「駄目だ、俺は自分で見て買いたいんだ」 「何故私がお供してはいけないのですか?」 「俺はもう子供じゃない。たまには羽根をのばさせろ。」 結局説得はかなわず、その『はじめてのおつかい』は決行された。 当日は秘密裏に街中にSPが配備される厳戒態勢。 気づかれぬように超小型の隠しカメラ、発信機などが彼の服に仕込まれ、街の防犯カメラなどと連携した監視ルームで、私は彼の動向を見守っていた。 彼と長い時間離れるのはどれ程久々だろうか。正直気が気じゃない。 「…ああ、もう」 彼は服屋でLサイズの服を何着も買い込んでいる。貴方はMサイズじゃないか。 貴金属店や書店などでもどうにか買い物を済ませ、洋菓子店に入ったようだ。 店員と何か話している。少しして店員がケーキに乗せるプレートを持って彼へ見せて、… 私は思わずそこの部分の映像を拡大した。 「…ああ」 何故忘れていたのだろう。 明日は、彼と私が出会ってちょうど10年になる記念日なのだ。 ---- [[はじめてのおつかい>15-729-1]] ----

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