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応援団 ---- 団長が手を動かしている。手はすいすい動いて針と糸を操っている。糸は太い、ソレ用の、ナントカっていう金色の糸だ。 俺はといえば、白いタスキと白いはちまき(これがまた長い)、それからシャツにアイロンをかけている。ちなみに、ここは部室で、家庭科室とか被服室とかではない。 「団長ぉー。なんか俺らー家庭部みたいじゃないすかー」俺がわざとらしく嘆くと、 「そーねー。なんかおんなのこみたいだよなぁー」団長がやる気ないかんじに答える。団長が縫ってるのは、旗だ。業者に頼む金がないわけではなく、応援団旗はその年の団長が縫うという伝統があるのだ。 つまり来年は俺が縫う。 「団長ぉー、それ男女差別っすよー」 「まーそーだねー」 部室は畳づくりの四畳間である。カタカタと壊れそうな音を立ててちっさい扇風機が回っている。 なんでかひらがなで扇風機に書いてある名前を、団長も知らないらしい。 じんわり汗が膝の裏ににじむ。開けっ放しにした戸の向こうは、もう薄暗い。 蝉の声もあまりしない。 「おんなのこみたいだよな、地味だし」 ん?ふとみると俺の斜め横で、壁によっかかって旗を縫ってた団長が俺のことを見てる。 「来年はひとりだなー」ニヤニヤして言う。 「来年は一年が入りますよ」少しむっと答えると、団長は大げさに首を振った。 「入んない、入んない、絶対入んない。 今時分、応援団なんてだれも入んないよ!目立たないしもてないし、意味分かんないもん」 「よくそこまで…」 「寂しいでしょ」 「はい?」 「俺がいなくなっちゃうと寂しいでしょ?」ニヤニヤしながら言う。いっすけど、団長、手、止まってますよ。 「寂しーい、寂しい、もちろん寂しいですよー」 「そうでしょー」 団長は嬉しそうに笑う。しかし団長、笑うと爬虫類みたいな顔ですね。 戸から入ってくる風が湿ってた。これから夕立がくるかもしれない。 ほんとに寂しいんですよ。 言おうとして、やめた。 ----   [[自分を最高に可愛いと思ってる男>3-269]] ----

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