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へたれ関西弁×クーデレ
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「神部さん、いてはります? 大家さんから伝言頼まれましてん。開けてー」
隣の部屋の黒田が今日も私の部屋を訪ねてくる。
毎回毎回、くだらない用事をよく見つけてくるものだと感心する。
無視をしようと思ったが、一向にあきらめる様子がない上、
インターフォンではなく、ドアを叩き始めたので、仕方なくドアを開けた。
「……どうも」
「おるんやったら、さっさと出てくれまへん? 疲れますやん」
「用件は簡潔にお願いします、黒田さん」
「いややわー。いつも簡潔やないみたいな言い方」
簡潔だったことがあるみたいな言い方じゃないか。
「連絡は書面でお願いしますって、何度も申し上げていますけど」
「隣の部屋におるのに、なんでわざわざ紙切れに書かなあきまへんの」
「もう2分たってますよ。用件は」
「2日後に、火災報知器の点検やて」
「そうですか」
「部屋におってくださいゆーことですよ?」
「ええ? 平日に?」
「ダメなら部屋に入らしてて」
潔癖な気が多少ある私は、自分の知らない人間が部屋に入るというのは、正直抵抗があった。
「わかりました。私の部屋は点検なしでいいです」
「ええー? そら、あかんわ」
「そうですね。黒田さん経由でお願いすることじゃないですね。自分で言います」
「神部さんとこが火事になったら、うちも一蓮托生ですやん」
「私はたばこも吸いませんし、このマンションはIHクッキングヒーターですし、
火事なんか起きません」
「静電気や摩擦熱で火事になるかもしれませんやん」
アホか。
「ガス漏れがあるかもしれませんやん」
「……火災報知器とガス警報器は違いますよ」
「ガスが爆発したら、どう責任とってくれますの」
「……さあ、どうやってとりましょうかね……」
頭が痛くなってきた。
「神部さんは、相変わらず無責任やね」
「相変わらずって何ですか」
「転勤の事、教えてくれへんかったし」
「君に教える必要ないから」
半年前まで私は大阪にいた。不覚ではあるが、こいつと私は肉体関係があった。
私は東京に帰る事が決まっていたので、後腐れない関係でいられる相手を選んだつもりだった。
後腐れないどころか、見た目と違って、なんでこんなにこいつは女々しいんだ。
嫌な予感がしたから、何も言わずに引っ越してきたというのに、
どこから調べたんだか、隣に引っ越してくるというのは、やり過ぎだと思うんだが。
「つきおうてたと思てたん、俺だけやったんかと思て、泣きましてん」
「勝手に泣いてればいいでしょう。今はただのお隣さんなんですから、さっさと部屋に帰って下さい」
「つれないわー」
「じゃあ、おやすみなさい」
私は半ば強引にドアを閉めた。腕時計をみる。なんでこれだけの事で15分もたっているのだろう。
だが、1分もしないうちに、またインターフォンが鳴った。
「神部さあーん」
「うるさいな!」
「部屋に入れなくなってもーてん」
「はあ?」
「鍵が開かない」
このマンションには、キーレス錠がついている。鍵を持たずに生活出来るのが売りだ。
キーレス錠は自分で暗証番号を設定する。
「暗証番号忘れたんですか? 覚えやすいのにしておけばいいのに」
「ごめんなー。ド忘れしてもーて。で、いつやったっけ」
「はあ?」
「神部さんの誕生日」
「……」
顔が赤くなるのが自分でもわかる。
目の前の男のにやにや顔に、ああ、腹が立つ!!
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[[堅物優等生×不真面目チャラ男>16-559]]
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