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既婚×未婚
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俺には妻だっている。子供だっている。その事を片時も忘れたことはない。
結婚したことを後悔したことはなかったし、今の自分は幸せな環境に居ると思う。
だが、最近になって少しずつ迷いが生じてきた。
「ねえ、――さぁん」
「っ!?」
じっと物思いに耽っていた俺を、迷いの「原因」である男が覗き込んできた。
「さっきから何か考え込んでるみたいですけど…大丈夫ですか?」
「あ、ああ、なんでもない」
そいつは職場の同僚で、隣のデスクでいつも仕事をしている。
実際は1つしか年が違わないのにそいつはやけに童顔で、初めて見た時は学生が紛れ込んでいるのかと
思ってしまったぐらいだ。
覗き込んできたそいつに慌てて目を白黒させた俺を、不思議そうに見ている。
「――さんが慌ててるところ、初めて見ましたよ」
そういって俺の迷いの元はくすくすと笑った。
この男が気になって仕方がない。
やたらと人なつっこく、「人当たりが悪い」「話しかけにくい」と知り合った人に必ず言われるような俺に、
臆することなく話しかけてくる。だが、案外落ち込みやすいようで、たまに俺に愚痴を零してくる。
普段の明るい表情と、そういう落ち込んだ時にする翳りのある表情のギャップを、
最近になって「魅力的」と捉えるようになってしまった。
俺はいたって普通だ。男に欲情したことなんて今までに一度もなかった。
だが、今の俺は違う。こいつの一挙一動にどきりとし、時に挙動までもおかしくなる。
まるで初恋をした子供のように。
すぐ目の前にある幸福か、それとも禁忌に満ちた感情か。
幸福を捨てるその時まで、俺の苦悩は続くだろう。
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[[良く喋る新人×口下手な上司>3-169]]
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