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執事 ---- 「坊ちゃま、そろそろお休みになられては?」 「だけどレナード、僕まだ全然眠くないよ」 「ベッドにお入りになって、目をつむってご覧なさい。じきに夢の国から小人がやって参ります」 「小人? レナードは小人を見たことがあるの?」 「えぇ、ございますよ。幼い頃はよく一緒に遊んだものです」 「へえ、僕とも遊んでくれるかな」 「もちろんですとも」 「あのね、僕、他にも遊びたい子がいるの」 「ほう、どちらのお方ですか?」 「一昨日お父様のお友達がいらしたでしょう」 「アスター様ですね」 「その1番下の子が僕と同じ歳なんだ、とっても優しくて面白い子だった」 「アスター家の末のお子様と言いますと、ドミニク様でございますね」 「僕ね、ドミと結婚するんだ。まだお父様とお母様には内緒だよ」 「おや坊ちゃま、もう婚約なされたのですか」 「ううん、ドミは考えてみるって言ってた。返事は次に会った時にねって」 「ドミニク様は賢明でいらっしゃいます、お二人のご結婚には少々やっかいな問題がございますから」 「問題ってなぁに?」 「まず坊ちゃまは、旦那様のたったお一人のお子様ですから、 必ず女性を娶ってこの家をお継ぎにならなければなりませんね」 「お嫁さんをもらうんでしょう、僕知ってるよ」 「ドミニク様はご兄弟の中では1番下でいらっしゃいますが、上はみなお姉様方ですから、ドミニク様もまたアスター家の跡継ぎでいらっしゃいます」 「ドミもお嫁さんをもらうの?」 「さすが坊ちゃま、私の心をお読みになりましたね」 「でもドミはどんな女の子よりも素敵だよ、きっとお嫁さんより」 「世の中には不条理なことが多々あるのでございます」 「どうしようレナード、僕ドミと結婚したいのに……」 「それはまた明日ゆっくり考えましょう。時間を空けた方が良い考えが浮かぶものです。さ、毛布をおかけになって」 「レナード、僕の恋を応援してくれる?」 「ええもちろん、私はいつでも坊ちゃまの味方です」 「絶対にだよ」 「神にかけてお約束します」 「レナードが味方をしてくれるから安心だね」 「ええ、ですから何も心配せずにお休みください。すぐそこまで小人が迎えに来ておりますよ」 「おやすみ、レナード」 「おやすみなさいませ、坊ちゃま」 「レナード、あの子は寝たかい?」 「ええ、実に素直な方でございます」 「私が言っても聞きやしないのに、お前は子供を寝かしつけるのが上手いな」 「ふふ、昔の旦那様のようなことをおっしゃっていましたよ」 「ほう、何と?」 「秘密にすると坊ちゃまと約束いたしましたので、教えてさしあげることはできません」 「まったく、うちの執事は有能だな」 「もったいないお言葉でございます」 「それじゃあそろそろ寝るよ。お休み、レナード。小人に会ったらよろしくな」 「ゆっくりお休みなさいませ、旦那様」
執事 ---- 「坊ちゃま、そろそろお休みになられては?」 「だけどレナード、僕まだ全然眠くないよ」 「ベッドにお入りになって、目をつむってご覧なさい。じきに夢の国から小人がやって参ります」 「小人? レナードは小人を見たことがあるの?」 「えぇ、ございますよ。幼い頃はよく一緒に遊んだものです」 「へえ、僕とも遊んでくれるかな」 「もちろんですとも」 「あのね、僕、他にも遊びたい子がいるの」 「ほう、どちらのお方ですか?」 「一昨日お父様のお友達がいらしたでしょう」 「アスター様ですね」 「その1番下の子が僕と同じ歳なんだ、とっても優しくて面白い子だった」 「アスター家の末のお子様と言いますと、ドミニク様でございますね」 「僕ね、ドミと結婚するんだ。まだお父様とお母様には内緒だよ」 「おや坊ちゃま、もう婚約なされたのですか」 「ううん、ドミは考えてみるって言ってた。返事は次に会った時にねって」 「ドミニク様は賢明でいらっしゃいます、お二人のご結婚には少々やっかいな問題がございますから」 「問題ってなぁに?」 「まず坊ちゃまは、旦那様のたったお一人のお子様ですから、 必ず女性を娶ってこの家をお継ぎにならなければなりませんね」 「お嫁さんをもらうんでしょう、僕知ってるよ」 「ドミニク様はご兄弟の中では1番下でいらっしゃいますが、上はみなお姉様方ですから、ドミニク様もまたアスター家の跡継ぎでいらっしゃいます」 「ドミもお嫁さんをもらうの?」 「さすが坊ちゃま、私の心をお読みになりましたね」 「でもドミはどんな女の子よりも素敵だよ、きっとお嫁さんより」 「世の中には不条理なことが多々あるのでございます」 「どうしようレナード、僕ドミと結婚したいのに……」 「それはまた明日ゆっくり考えましょう。時間を空けた方が良い考えが浮かぶものです。さ、毛布をおかけになって」 「レナード、僕の恋を応援してくれる?」 「ええもちろん、私はいつでも坊ちゃまの味方です」 「絶対にだよ」 「神にかけてお約束します」 「レナードが味方をしてくれるから安心だね」 「ええ、ですから何も心配せずにお休みください。すぐそこまで小人が迎えに来ておりますよ」 「おやすみ、レナード」 「おやすみなさいませ、坊ちゃま」 「レナード、あの子は寝たかい?」 「ええ、実に素直な方でございます」 「私が言っても聞きやしないのに、お前は子供を寝かしつけるのが上手いな」 「ふふ、昔の旦那様のようなことをおっしゃっていましたよ」 「ほう、何と?」 「秘密にすると坊ちゃまと約束いたしましたので、教えてさしあげることはできません」 「まったく、うちの執事は有能だな」 「もったいないお言葉でございます」 「それじゃあそろそろ寝るよ。お休み、レナード。小人に会ったらよろしくな」 「ゆっくりお休みなさいませ、旦那様」 ---- [[忘れないで>15-309]] ----

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