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誇り ---- 自分なりの誇りを模索しつつ戦う王子の話はいかがでしょう。  以下、無駄に膨大なあらすじ&シーン抜き取りです。女の子も出てくるので注意。  舞台は小さいけど豊かな国。  美しい港、肥沃な大地、実直で勤勉な人々のおかげでその王国は栄えていた。  しかしその恩恵を受けようと、強欲な隣国の軍が王国への侵略を度々企んだ。  その度に人々は結束し、勇敢に戦って敵を退けてきた。  主人公は王子。若くして戦線に立って指揮を執り、 圧倒的に不利な状況をひっくり返して勝利を収めたために 他の国からも自国の民からも希代の名将として特別視されている。  王子は自国の平和を乱し、搾取を狙う隣国を激しく憎み、 「国のために戦い、誇りのために死ね」というモットーで鬼神のごとく戦った。  兵士達は王子の言葉に奮い立ち、死を恐れずに敢然と敵に立ち向かったのだった。            ――ここまで前フリ―― 「そこの兵隊さんもどうですか」  王子は突然呼ばれて驚くが、先ほどのやりとりから密偵ではないと判断し、  商人のもとに近づく。 「あんたは商売上手だな」 「あの子も君も、ずいぶん長いこと見てるからさ」  商人から最後の一つだった果物を手渡され、王子は金貨を差し出す。 「俺は賄賂は受け取らない主義だ」 「まいった、ここの兵隊さんは清廉潔白なんだね。貢ぎ物って言えば良かった」 「それを言うなら贈り物だろう」 「あるいは勇敢な戦士への供物ってとこかな」  王子の表情が微妙に変わったのを見て、商人は話を変える。 「悪いけど、入り用でお金が必要なんだ。お釣りが現物になっても良いかい?」  商人が取り出した作りの良い懐中時計を見て、王子は頷く。 「ここは良い国だね。あの子はお金がないと言ったけど、盗みを働こうとはしなかった」 「ああ、みな気の良い者達だ」 「お隣りの国ではこうはいかない」 「あんた、あっちにも行ったのか」 「財布をすられたよ。果物が売れなかったら国に帰れなくなるところだった」  飄々と語る商人に王子は驚く。  また、切羽詰った状況にあっても子供への思いやりを忘れない商人に興味が沸き、 彼の話をもっと聞きたいと考える。 「それは難儀だったな。何かの縁だ、一緒に酒でも飲まないか」 「おや、賄賂が効いたかな?」 「友情の証なら受け取る」  こうして二人は心を交わし、海を越えた友情を育てる。  酒場にて。 王子「あんたの父上はどのような方だったんだ」 商人「お偉いさんさ。下の者に命令を出して、自分は煙草をふかすような」 王子「戦場には指揮官が必要だ。立場に見合った仕事がある」 商人「求められるのは優秀な指揮官だ。無能な指揮官は国を滅ぼす」 王子「お父上は無能だったと?」 商人「そうだね。頭の回る人だしそれなりに結果を残してたけど、    僕は蛮勇を奮う者を優秀とは言いたくないんだ。君はどう思う」 王子「勝てば優秀で負ければ無能だ」 商人「シンプルだなぁ」 王子「この国は長い間ずっと隣国からの干渉を受けてきた。戦いにも慣れている」 商人「“誇りを賭けた戦い”だね」 王子「知っているのか」 商人「海の向こうでも有名になってるよ。悪魔のように強い将軍様がいて、    絶体絶命の状況を逆手にとって向こうの軍をなぎたおしたって」 王子「何匹分も尾ひれがついてそうだな」 商人「もう一つ知ってる。“国のために戦い、誇りのために死ね”」 王子「誓いの言葉だ」 商人「もしも僕が将軍だったら、この台詞は決して言わない」 王子「……何故だ」 商人「なんだい君、ちっとも飲んでないじゃないか。ほら、杯を貸してくれ」 王子「あ、ああ。悪いな」 商人「ここは本当にいい国だね。酒が美味いし、女もきれいだ」 王子「あんたの国はどんなところだ」 商人「まあまあってところかな。父は失敗したが、兄は優秀だ」 王子「兄上がどうしたって?」 商人「いや、こちらの話さ。とりあえず飲みなよ、夜はまだ長い……」  次の朝、王子は港まで商人を送る。  そこには昨日の少女も来ていて、商人の姿を見つけて駆け寄ってくる。 少女「果物とっても美味しかったわ! 母さんも喜んでた」 商人「そうか、気に入ってくれて良かった。大きくなったら僕の国においで。    夏になればそこら中に実がなるんだ、いくらでも食べ放題だよ」 少女「もう帰るの?」 商人「残念ながらね。君に会えてよかった」 少女「私もよ。じゃあお別れにこれあげる、航海のおまもり」 商人「わあ、ぬいぐるみ? 君が作ったの?」 少女「うん、母さんに習ったの。これがあれば、お父様を思い出してもさみしくないでしょう」 商人「君は心優しいレディーだね。ありがとう、大切にするよ」 少女「そこにかがんで。キスしてあげるわ」 商人「嬉しいな。大人になってからもしてくれよ」 少女「結婚する前ならね」 商人「慎みは女性の美徳だ。レディ、僕はもう帰るけど、僕の友達とも仲良くしてくれる?」 少女「あら、兵隊さんもキスしてほしいの?」 王子「いや、俺は……」 商人「彼はシャイなんだ」 少女「いいわよ。この国を守ってくれる誇り高き戦士だもの」 商人「良かったな」  頬にキスされて黙り込む王子の顔を、少女が下から覗き込む。 少女「でも死んじゃいやよ、友達まで死んじゃったらさみしいもの」  王子が少女の境遇に思いを馳せていると、商人が王子の背を軽く叩いて 大丈夫、この男は悪魔みたいに強いんだと少女に告げる。 王子はぎょっとして商人を見つめるが、相手の態度は何も変わらない。 丁度その時、商人の乗る船が出港の準備を終えて海に出ようとしていた。 少女「やぁね、悪魔だって不死じゃないのよ。今度兵隊さんにもお守りを作ってあげるわ」 商人「感謝するよ、レディ。兵隊さんも、有意義な夜をありがとう」  商人は進みだした船に向かって走り出し、すんでのところで飛び乗った。 王子「待て、あんた一体何者だ」  船は、徐々に遠ざかっていき、二人は互いに声を張り上げる。 商人「僕に会いたくなったら海の向こうの国を訪ねてくれ。    あの時計を見せれば、誰かが取り次いでくれる」 王子「私のことを知っていたのか」 商人「普通の兵は商人に金貨なんか渡さないよ、次からは気をつけるべきだ」 王子「あの果物は――」 商人「友情の証さ! 僕はこの国も君たちもすっかり気に入ってしまったからね!」  更に小さくなっていく船に、少女が大きく手を振る。 少女「私もあなたのこと気に入ったわー!」  また会おう、という商人の声を最後に、船は国に帰っていった。  王子は呆然として、ポケットから懐中時計を取り出す。  その裏側には、海を挟んだ国の王家だけが使うことを許されている紋章が掘り込まれていた。 少女「兵隊さんもわいろをもらったの?」  聞く人が聞けば大事件として取り沙汰されるようなことを少女に言われ、王子は頭を抱えた。  王子は商人(のフリをした他国の王族)の言葉の意味を考える。 「もしも僕が将軍だったら、この台詞は決して言わない」 ――国のために戦い、誇りのために死ね。  人々は奮起し、隣国に打ち勝った。この国は守られたのだ。  何も間違ってはいない、兵士たちは勇敢に戦い、見事な生き様を見せてくれた。  そう思う一方で、少女の言葉も耳に残っていた。 「死んじゃいやよ、友達まで死んじゃったらさみしいもの」 「今度兵隊さんにもお守りを作ってあげるわ」  彼女と母の貧しい食卓に、あの果物はどれだけの潤いを与えたのだろう。  父や兄を失ってなお、他人を慈しむ心を忘れないこの国の子供はなんと美しいだろう。  王子が一つの結論に至った頃、国境に隣国の兵が向かっているという知らせが届く。  すみやかに軍議が設けられ、もちろん王子も呼び出された。  いくつかの守備・攻撃の戦術が提案された後、王子は意見を求められた。 王子「戦わないという方法もある」  周囲の軍人はざわめき、名将、気が狂ったかと口走る者もいた。 軍人「どういった方法です、凡兵にもわかるようにおっしゃってもらわなければ」 王子「海向かいの国と同盟を結び、その旨を隣国に伝えるのだ。    あの国は隣国を上回る勢力を持っている。大きな威嚇になるだろう」 軍人「は! 猫のケンカじゃあるまいし、威嚇などにどれほどの意味がありましょう。    戦って血を流さなければ、愚かな奴らはわからんのです」 王子「そうやって今まで幾度も戦ってきたではないか。結果、何も変わらない」 軍人「もしもあの国が隣国以上の脅威になったら如何されるのです」 王子「いや、それはない」 軍人「何故言い切れるのですか」 王子「――内々に上部と話をつけておいた」 軍人「何ということを……!」 王子「もちろん国境には兵を置く。しかしこちらからは手を出さぬ」 軍人「この国の誇りをお忘れになったのか! 他国に助けを請うなど許されない行為だ。    私はあなたに余所の王の靴をお舐めさせて勝とうとは思わない!」  悲痛な叫びが響き、広くはない会場が静まり返る。  王子は侮辱ともとれる発言にも落ち着いたまま、穏やかに語りかけた。 王子「お前にとって誇りとはなんだ」 軍人「この土地と我が血でございます」 王子「私にとってはおまえ達すべてが誇りだ」  その場にいた全ての者が王に注目した。 「全ての民は私の父であり、母であり、兄弟である。みな愛しい家族だ。 私の統べるべき国に生まれてきてくれた美しい者たちだ。 皆がいなければこの国もなかった。民こそが私の誇りだ。   誇りを守るために、私は最良の方法を選ぶ。それだけだ。 民のために戦い、誇りのために生きるのだ」  王子が話し終えると、もう反対する者はいなかった。  兵の割り当てと渡航の詳細を決め、王子は商人のもとへ行くことになり、  最後まで王子に反対していた軍人が国境を防衛する役割を担うことになった。 (王子は名将と言われる自分に、信念のために逆らった軍人を信頼した)  出航の際、王子は港で人待ち顔の少女を見つける。  声をかけると、少女は以前と違って立派な服を着ている王子に驚く。  少女「いやだ、すっかり見違えちゃったからわからなかった!」 王子「あいつに会ってくる」 少女「よろしくって言っておいてね。あ、約束のお守りよ。やっと渡せるわ」 王子「心強いな」 少女「キスは要る?」  王子は彼女の前に跪き、両頬にキスを受ける。 少女「王室式なのね、すてき! 片方のキスはあの人にあげてね」 王子「君のためなら、レディ」 少女「いってらっしゃい、王子様」  こうして王子は異国に着き、商人(の振りをしてた王子)にキスをして面食らわせ、 あれやこれやしてすばやく同盟を組み、隣国に脅しをかけて 戦争を回避&今後の侵攻の禁止を約束させます。  民衆はもう隣国に脅かされることがなくなったと聞き、お祭り騒ぎ。  希代の名将はそのうち希代の賢王として期待されるようになりました。  王国同士の国交は末永く続き、二人の友情も更に深まり、 少女の結婚式の際は三人でヴァージンロードを歩いたのでした。 ---- [[誇り>16-159-1]] ----
誇り ---- 自分なりの誇りを模索しつつ戦う王子の話はいかがでしょう。  以下、無駄に膨大なあらすじ&シーン抜き取りです。女の子も出てくるので注意。  舞台は小さいけど豊かな国。  美しい港、肥沃な大地、実直で勤勉な人々のおかげでその王国は栄えていた。  しかしその恩恵を受けようと、強欲な隣国の軍が王国への侵略を度々企んだ。  その度に人々は結束し、勇敢に戦って敵を退けてきた。  主人公は王子。若くして戦線に立って指揮を執り、 圧倒的に不利な状況をひっくり返して勝利を収めたために 他の国からも自国の民からも希代の名将として特別視されている。  王子は自国の平和を乱し、搾取を狙う隣国を激しく憎み、 「国のために戦い、誇りのために死ね」というモットーで鬼神のごとく戦った。  兵士達は王子の言葉に奮い立ち、死を恐れずに敢然と敵に立ち向かったのだった。            ――ここまで前フリ―― 「そこの兵隊さんもどうですか」  王子は突然呼ばれて驚くが、先ほどのやりとりから密偵ではないと判断し、  商人のもとに近づく。 「あんたは商売上手だな」 「あの子も君も、ずいぶん長いこと見てるからさ」  商人から最後の一つだった果物を手渡され、王子は金貨を差し出す。 「俺は賄賂は受け取らない主義だ」 「まいった、ここの兵隊さんは清廉潔白なんだね。貢ぎ物って言えば良かった」 「それを言うなら贈り物だろう」 「あるいは勇敢な戦士への供物ってとこかな」  王子の表情が微妙に変わったのを見て、商人は話を変える。 「悪いけど、入り用でお金が必要なんだ。お釣りが現物になっても良いかい?」  商人が取り出した作りの良い懐中時計を見て、王子は頷く。 「ここは良い国だね。あの子はお金がないと言ったけど、盗みを働こうとはしなかった」 「ああ、みな気の良い者達だ」 「お隣りの国ではこうはいかない」 「あんた、あっちにも行ったのか」 「財布をすられたよ。果物が売れなかったら国に帰れなくなるところだった」  飄々と語る商人に王子は驚く。  また、切羽詰った状況にあっても子供への思いやりを忘れない商人に興味が沸き、 彼の話をもっと聞きたいと考える。 「それは難儀だったな。何かの縁だ、一緒に酒でも飲まないか」 「おや、賄賂が効いたかな?」 「友情の証なら受け取る」  こうして二人は心を交わし、海を越えた友情を育てる。  酒場にて。 王子「あんたの父上はどのような方だったんだ」 商人「お偉いさんさ。下の者に命令を出して、自分は煙草をふかすような」 王子「戦場には指揮官が必要だ。立場に見合った仕事がある」 商人「求められるのは優秀な指揮官だ。無能な指揮官は国を滅ぼす」 王子「お父上は無能だったと?」 商人「そうだね。頭の回る人だしそれなりに結果を残してたけど、    僕は蛮勇を奮う者を優秀とは言いたくないんだ。君はどう思う」 王子「勝てば優秀で負ければ無能だ」 商人「シンプルだなぁ」 王子「この国は長い間ずっと隣国からの干渉を受けてきた。戦いにも慣れている」 商人「“誇りを賭けた戦い”だね」 王子「知っているのか」 商人「海の向こうでも有名になってるよ。悪魔のように強い将軍様がいて、    絶体絶命の状況を逆手にとって向こうの軍をなぎたおしたって」 王子「何匹分も尾ひれがついてそうだな」 商人「もう一つ知ってる。“国のために戦い、誇りのために死ね”」 王子「誓いの言葉だ」 商人「もしも僕が将軍だったら、この台詞は決して言わない」 王子「……何故だ」 商人「なんだい君、ちっとも飲んでないじゃないか。ほら、杯を貸してくれ」 王子「あ、ああ。悪いな」 商人「ここは本当にいい国だね。酒が美味いし、女もきれいだ」 王子「あんたの国はどんなところだ」 商人「まあまあってところかな。父は失敗したが、兄は優秀だ」 王子「兄上がどうしたって?」 商人「いや、こちらの話さ。とりあえず飲みなよ、夜はまだ長い……」  次の朝、王子は港まで商人を送る。  そこには昨日の少女も来ていて、商人の姿を見つけて駆け寄ってくる。 少女「果物とっても美味しかったわ! 母さんも喜んでた」 商人「そうか、気に入ってくれて良かった。大きくなったら僕の国においで。    夏になればそこら中に実がなるんだ、いくらでも食べ放題だよ」 少女「もう帰るの?」 商人「残念ながらね。君に会えてよかった」 少女「私もよ。じゃあお別れにこれあげる、航海のおまもり」 商人「わあ、ぬいぐるみ? 君が作ったの?」 少女「うん、母さんに習ったの。これがあれば、お父様を思い出してもさみしくないでしょう」 商人「君は心優しいレディーだね。ありがとう、大切にするよ」 少女「そこにかがんで。キスしてあげるわ」 商人「嬉しいな。大人になってからもしてくれよ」 少女「結婚する前ならね」 商人「慎みは女性の美徳だ。レディ、僕はもう帰るけど、僕の友達とも仲良くしてくれる?」 少女「あら、兵隊さんもキスしてほしいの?」 王子「いや、俺は……」 商人「彼はシャイなんだ」 少女「いいわよ。この国を守ってくれる誇り高き戦士だもの」 商人「良かったな」  頬にキスされて黙り込む王子の顔を、少女が下から覗き込む。 少女「でも死んじゃいやよ、友達まで死んじゃったらさみしいもの」  王子が少女の境遇に思いを馳せていると、商人が王子の背を軽く叩いて 大丈夫、この男は悪魔みたいに強いんだと少女に告げる。 王子はぎょっとして商人を見つめるが、相手の態度は何も変わらない。 丁度その時、商人の乗る船が出港の準備を終えて海に出ようとしていた。 少女「やぁね、悪魔だって不死じゃないのよ。今度兵隊さんにもお守りを作ってあげるわ」 商人「感謝するよ、レディ。兵隊さんも、有意義な夜をありがとう」  商人は進みだした船に向かって走り出し、すんでのところで飛び乗った。 王子「待て、あんた一体何者だ」  船は、徐々に遠ざかっていき、二人は互いに声を張り上げる。 商人「僕に会いたくなったら海の向こうの国を訪ねてくれ。    あの時計を見せれば、誰かが取り次いでくれる」 王子「私のことを知っていたのか」 商人「普通の兵は商人に金貨なんか渡さないよ、次からは気をつけるべきだ」 王子「あの果物は――」 商人「友情の証さ! 僕はこの国も君たちもすっかり気に入ってしまったからね!」  更に小さくなっていく船に、少女が大きく手を振る。 少女「私もあなたのこと気に入ったわー!」  また会おう、という商人の声を最後に、船は国に帰っていった。  王子は呆然として、ポケットから懐中時計を取り出す。  その裏側には、海を挟んだ国の王家だけが使うことを許されている紋章が掘り込まれていた。 少女「兵隊さんもわいろをもらったの?」  聞く人が聞けば大事件として取り沙汰されるようなことを少女に言われ、王子は頭を抱えた。  王子は商人(のフリをした他国の王族)の言葉の意味を考える。 「もしも僕が将軍だったら、この台詞は決して言わない」 ――国のために戦い、誇りのために死ね。  人々は奮起し、隣国に打ち勝った。この国は守られたのだ。  何も間違ってはいない、兵士たちは勇敢に戦い、見事な生き様を見せてくれた。  そう思う一方で、少女の言葉も耳に残っていた。 「死んじゃいやよ、友達まで死んじゃったらさみしいもの」 「今度兵隊さんにもお守りを作ってあげるわ」  彼女と母の貧しい食卓に、あの果物はどれだけの潤いを与えたのだろう。  父や兄を失ってなお、他人を慈しむ心を忘れないこの国の子供はなんと美しいだろう。  王子が一つの結論に至った頃、国境に隣国の兵が向かっているという知らせが届く。  すみやかに軍議が設けられ、もちろん王子も呼び出された。  いくつかの守備・攻撃の戦術が提案された後、王子は意見を求められた。 王子「戦わないという方法もある」  周囲の軍人はざわめき、名将、気が狂ったかと口走る者もいた。 軍人「どういった方法です、凡兵にもわかるようにおっしゃってもらわなければ」 王子「海向かいの国と同盟を結び、その旨を隣国に伝えるのだ。    あの国は隣国を上回る勢力を持っている。大きな威嚇になるだろう」 軍人「は! 猫のケンカじゃあるまいし、威嚇などにどれほどの意味がありましょう。    戦って血を流さなければ、愚かな奴らはわからんのです」 王子「そうやって今まで幾度も戦ってきたではないか。結果、何も変わらない」 軍人「もしもあの国が隣国以上の脅威になったら如何されるのです」 王子「いや、それはない」 軍人「何故言い切れるのですか」 王子「――内々に上部と話をつけておいた」 軍人「何ということを……!」 王子「もちろん国境には兵を置く。しかしこちらからは手を出さぬ」 軍人「この国の誇りをお忘れになったのか! 他国に助けを請うなど許されない行為だ。    私はあなたに余所の王の靴をお舐めさせて勝とうとは思わない!」  悲痛な叫びが響き、広くはない会場が静まり返る。  王子は侮辱ともとれる発言にも落ち着いたまま、穏やかに語りかけた。 王子「お前にとって誇りとはなんだ」 軍人「この土地と我が血でございます」 王子「私にとってはおまえ達すべてが誇りだ」  その場にいた全ての者が王に注目した。 「全ての民は私の父であり、母であり、兄弟である。みな愛しい家族だ。 私の統べるべき国に生まれてきてくれた美しい者たちだ。 皆がいなければこの国もなかった。民こそが私の誇りだ。   誇りを守るために、私は最良の方法を選ぶ。それだけだ。 民のために戦い、誇りのために生きるのだ」  王子が話し終えると、もう反対する者はいなかった。  兵の割り当てと渡航の詳細を決め、王子は商人のもとへ行くことになり、  最後まで王子に反対していた軍人が国境を防衛する役割を担うことになった。 (王子は名将と言われる自分に、信念のために逆らった軍人を信頼した)  出航の際、王子は港で人待ち顔の少女を見つける。  声をかけると、少女は以前と違って立派な服を着ている王子に驚く。  少女「いやだ、すっかり見違えちゃったからわからなかった!」 王子「あいつに会ってくる」 少女「よろしくって言っておいてね。あ、約束のお守りよ。やっと渡せるわ」 王子「心強いな」 少女「キスは要る?」  王子は彼女の前に跪き、両頬にキスを受ける。 少女「王室式なのね、すてき! 片方のキスはあの人にあげてね」 王子「君のためなら、レディ」 少女「いってらっしゃい、王子様」  こうして王子は異国に着き、商人(の振りをしてた王子)にキスをして面食らわせ、 あれやこれやしてすばやく同盟を組み、隣国に脅しをかけて 戦争を回避&今後の侵攻の禁止を約束させます。  民衆はもう隣国に脅かされることがなくなったと聞き、お祭り騒ぎ。  希代の名将はそのうち希代の賢王として期待されるようになりました。  王国同士の国交は末永く続き、二人の友情も更に深まり、 少女の結婚式の際は三人でヴァージンロードを歩いたのでした。 ---- [[女顔がコンプレックスな攻め>16-159]] ----

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