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カナーリ背の低い強がり攻め×色白細身の敬語受け
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―何せ、白い顎なんだ。
朝のラッシュの中、少し斜め上を見上げると何時も俺の頭の上に被さっている。
右側にある小さなホクロの位置も、細い首筋にかけて微かに透ける蒼い血管も、ほんの僅か突き出た喉仏の形ももう覚えた。
フェチじゃねぇよ。仕方ねぇだろ、毎朝凡そ40分の乗車時間中、降車駅まで開かない扉を背にして立つと見えるのは、何時もその白い顎なんだから嫌でも覚えるさ。
圧されるとソイツは、「すみません。」
と言いながら、扉に片肘を突いて躰を支え、それ以上俺が押し潰されないようにするから必然、俺の目に見えるのはソイツの白い顎と首筋だけになる。
ソイツがそうして気をつかってくれてるおかげで、並外れてチビな俺も満員電車の中、楽に呼吸ができるんだから、首筋にかぶりつきたいのを堪えて感謝してるさ。
時にちょっと茶目っ気が出て、ふぅと息を吹きかけると、その首の線が僅かに震える―。
名前も知らねえ。降車駅でも人波に押し出されてそれっきりだから顔すら見たこともないんだが、ソイツと一緒の時間、俺は毎朝が楽しい。―
―先輩、あまり変わってらっしゃらないのですぐ分かりました。
中学の頃、まだ背の低かった僕と同じ位の背の高さにも関わらず、スポーツ万能で、バスケでは何時もカッコ良くジャンプしてシュートを決めてらした先輩に憧れていたんですよ。
僕の方はあれからすっかり背も延びてしまいましたが、先輩はあまり御変わりないんですね。何時もしゃきっと延ばした背筋も、奥に優しさを秘めた鋭い眼差しも。
あの日、駅で先輩を見掛けて以来、何時も同じ車両に乗れるように時間を合わせているんです。
たまに時間が合わずに先輩を見付けられない時は、寂しくて、もう会えないかもなどと考えます。―
―たまに悪戯で先輩が僕の首筋に息を吹きかけてくると、背の高い筈の僕の方が呼吸が苦しくなって、そのまま先輩の頭を抱き締めてしまいたくなります。―
―でも、何時か、声を掛けようと思いつつ、僕は今朝も、人波に押し出される先輩の小さな御姿を見送ることしかできません。―
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[[「恋は本屋さんで売っている」>3-979]]
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