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自分も気圧の知識がなかったwでも文章とかの雰囲気は好き!お次どうぞ ---- 「お前、気象予報士にでもなんの?」 うるさい奴が来た。どう考えても人種が違うのに しつこく絡んでくるこいつとは、入学式で隣だったというだけの関係だ。 「考え中」 短く言って、僕は奴を視界から追い出し、 『石原良純のこんなに楽しい気象予報士 (小学館文庫)』に視線を戻す。 「はっ、おまえ、良純って」 「うるさい」 「――前は『小説家になる方法』読んでなかったか」 そうなのだ、こいつはことごとく嫌なタイミングで現われる。 その時は、本を開きながら書いていた散文を読まれたのだった。 「あれは……いいんだ、もう」 ため息をつきながら言うと、 「なんだ、お前の書く文章の雰囲気、好きだったのに」と奴は言った。 思わず奴を見る。目が合って、しまった、と思った。 畜生、不意打ちだ、こいつはことごとく嫌なタイミングでこういうことを言う。 「空気は気体であるから、その性質として容積を限りなく増大しようとする。 それで空気を容器内に閉じ込めると、どこまでも膨張しようとする結果、 その容器の内面を押すことはもちろん、器内にあるものはみな押される。 この押す力を空気の圧力すなわち気圧という」 僕が覚えたての薀蓄を一息に言うと、奴はあっけにとられた顔をした。 「なにソレ」 「気圧だ、気圧。いいか、良純はなぁ、もっと膨大な知識蓄えてんだよ、 なんの知識もないくせに良純を馬鹿にするな」 睨み付けながら言うと、奴は口の端をチェシャ猫みたいに吊り上げて、 「やっぱ、面白いな、おまえ」 と言った。ああ、これだから嫌なのだ。 こいつが僕に言う言葉はどれをとっても、きっと本気ではない。 僕の文章を好きだと言った言葉も、どうせ信じられたものではないのだ。 なぜ気圧の薀蓄をすぐさま覚えることができたのかといえば、 それがどこか、自分が奴に抱く感情に似て――と、思いかけたとき、にやけた笑いのまま奴は言った。 「で、次はなにになんの?」 引きずられそうになった思考を元に戻し、 「うるさい、良純に謝れ」と、僕は奴の脛を蹴った。 ----   [[探偵 >16-079]] ----

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