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愛馬 ---- 「――様の、馬だけが戻られました」 その報に、心の臓を鷲掴まれた気分だった。 精鋭を率いての重要な任務で、彼は敢えて危険な役目を買ってでた。 「馬の鞍にこれが」 破られた布片に、敵の罠にかかったこと、これからの戦局に必要な情報などが簡潔に書かれている。 荒く、震えた字だが、確かに彼のものだった。 「……、」 最後には、私あての一文があった。 吐き気がする。こんなに簡単に失ってしまうのか。 「これ、どうどう」 厩番が彼の愛馬を落ち着かせようと必死になっている。 「どうやら、戦場に戻りたいようで…主人の事をまこと思うているのでしょう」 私は、厩番から馬の手綱を預かりその鼻筋を撫でる。 「行ってはならぬ」 決して行ってはならぬのだ、何度も、何度も繰り返した。 ---- [[お屋敷のお坊ちゃま×下町のガキ大将>16-099]] ----
愛馬 ---- 「――様の、馬だけが戻られました」 その報に、心の臓を鷲掴まれた気分だった。 精鋭を率いての重要な任務で、彼は敢えて危険な役目を買ってでた。 「馬の鞍にこれが」 破られた布片に、敵の罠にかかったこと、これからの戦局に必要な情報などが簡潔に書かれている。 荒く、震えた字だが、確かに彼のものだった。 「……、」 最後には、私あての一文があった。 吐き気がする。こんなに簡単に失ってしまうのか。 「これ、どうどう」 厩番が彼の愛馬を落ち着かせようと必死になっている。 「どうやら、戦場に戻りたいようで…主人の事をまこと思うているのでしょう」 私は、厩番から馬の手綱を預かりその鼻筋を撫でる。 「行ってはならぬ」 決して行ってはならぬのだ、何度も、何度も繰り返した。 ---- [[愛馬>16-089-1]] ----

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