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パティシエの恋 ---- 閉店の片づけを終えた彼は、レジ前の待ち椅子にかけて一息ついていた。 「おつかれさま」 僕は彼の前にイートイン用のカップに淹れたホットチョコレートを差し出した。 「明日からはひな祭りとホワイトデー用のメニューに変えるから、 余り物処分に協力して」 「俺、甘いもの苦手なんですけど」 「なのにケーキ屋でバイトって矛盾してないか?」 「苦手なものなら、バイトしてても食べたくならないでしょ?」 「なるほど。でも、コレは甘いの苦手でもいけると思うから試してみてよ」 「はあ...」 彼はカップを受け取ると、おそるおそるといった様子で口をつけて、ぱっと 顔を上げた。 「これ、美味いです。全然甘くない。砂糖入ってないんですか?」 「砂糖は少しは入ってるけどね。カカオ分が多くてクローブとシナモン を効かせてるから、甘ったるくないでしょ?」 「ビターな大人の男の味って感じすね!」 そういう彼の表情はむしろ子供っぽかった。
パティシエの恋 ---- 閉店の片づけを終えた彼は、レジ前の待ち椅子にかけて一息ついていた。 「おつかれさま」 僕は彼の前にイートイン用のカップに淹れたホットチョコレートを差し出した。 「明日からはひな祭りとホワイトデー用のメニューに変えるから、 余り物処分に協力して」 「俺、甘いもの苦手なんですけど」 「なのにケーキ屋でバイトって矛盾してないか?」 「苦手なものなら、バイトしてても食べたくならないでしょ?」 「なるほど。でも、コレは甘いの苦手でもいけると思うから試してみてよ」 「はあ...」 彼はカップを受け取ると、おそるおそるといった様子で口をつけて、ぱっと 顔を上げた。 「これ、美味いです。全然甘くない。砂糖入ってないんですか?」 「砂糖は少しは入ってるけどね。カカオ分が多くてクローブとシナモン を効かせてるから、甘ったるくないでしょ?」 「ビターな大人の男の味って感じすね!」 そういう彼の表情はむしろ子供っぽかった。 ---- [[パティシエの恋>15-259-1]] ----

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