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追われる者×追う者 ---- 深夜の呼び出しに応じてふらりと自宅に現れた彼は、 ソファに組み敷かれ、諦めたように目を閉じた。 その強張った表情が甘くとろけるまでの短い時間、男は決まって考え事をする。 今はまだ到底認められないが、大雑把に括るならライバルであるはずの自分に、 彼はいったいどんな気持ちで抱かれているのか。 プライベートでは驚くほど無口な彼の本心は、掴みどころのない雲のようだった。 知りたい、と思う気持ちを容赦なくねじ伏せる。 そんなことはどうでもいい。知って、どうしようというのか。 彼に出会った瞬間、男はある予感を抱いた。 将来、自分からトップの座を奪い取るのは間違いなくこいつだと、直感的に悟った。 実力は折り紙つきだし、野心もある。努力も惜しまない。 しかし、頂点に上り詰めるにはそれだけでは足りない。 王者の素質とでもいうべき何かを、彼は備えていた。 実力や名声と相応に、人並み外れて自尊心の高い男である。 次代の脅威を感じた時点ですっぱり退かないのは何故なのか。 実際のところ、それは本人にも解けない謎だった。 (ま、簡単にゃ抜かせねえよ。) いつか、こいつに引きずり下ろされるのだろう。 かつて、自分がそうしたように。 しかしその時が来るまで、全力をもって王座に君臨し続ける。 それは追われる者としての矜持だ。 仰け反る彼の耳元に顔を寄せ、男は恋人の声音で囁いた。 「せいぜい、楽しませてくれよ。」 ----   [[追われる者×追う者 >2-189-2]] ----

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