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にっこり笑顔が二つ
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あのさ、とか言っているこの人が愛おしかった。
オレの恋人は、高校のころの先輩で今は会社の上司で頼れる人だ。
バリバリ仕事をして、余暇はしっかりと取るし公私混同は絶対にしない。
それにめちゃくちゃ頼りになるし優しい。
たとえば、めちゃくっちゃ困難なことがあってそれで話を振るとする。
そうしたら、この人はどんな相手にだって
(どんなにめんどくさい人にだってだ!)手を差し伸べる。
自分の仕事を抱えながらも、そっちの仕事もこなして、さらに周りに気も使える。
女子の同僚からは”高嶺の人”とか言われていて、
上司にしたい人理想の恋人私生活が気になる人ナンバー1。そんな人。
…のはずなんだけど、なぜかオレの前ではそんなそぶりは見せないし、
もっと力が抜けている。Jホラーの予告を見ただけで
ぎゃーぎゃー悲鳴を上げるぐらいの怖がりだし、
甘いものが好きでからかってみると目に見えてしょんぼりする。
料理をするのも好きで、オレの好きな料理を作るのが特に好きだという。
どこの新婚だよ、とオレは思うけど実際悪い気はしない。
だいぶ外と雰囲気が違うが欠点を上げるとしてもたったひとつしかない。
そして、この人の唯一無二な欠点。高校から変わりないし治らない癖みたいなもんだ。
「だから、何回言われたってオレがセンパイから離れるわけないじゃないっすか。
そりゃ、先輩がオレとの関係を終わりにしたいとかなら、
幸せになりますって誓えるんだったら応じますけど」
「そんなわけないだろ!?なんで俺から別れを切り出すんだよ!
お前が言うならともかくも」
欠点。オレから告白して、べたぼれもいいところなのに、
なぜか見捨てられるんじゃないかって思うのが治らないことだ。
最初も遊びか冗談だと思われた。
「オレ、あんたのことがすごく好きなんすよ。何百回だって言いますけど」
「俺だって好きだよ、だから」
「だから、幸せになる邪魔をしたくないとかっすか?
耳にタコができるぐらい聞いたんですけど」
「 …なら、」
「じゃ、指輪いらないんですね」
・・・と間があいて。ぽかんとした顔の恋人はオレを見た。
「…今、なんて言った?」
「指輪いらないんですね」
「それって俺に?」
「あんた以外に贈るぐらい好きな人っていないんすけど」
「…めんどくさいよ、今以上にめんどくさくなるかもしれない」
「今でも十分めんどくさいっすよ」
「なら、」
「外で人の期待を裏切れないから頑張って、家じゃ甘えたでネガティブ。
そんな面倒な人と何年も付き合ってるんですよ?
いい加減信じてくれてもいいんじゃないですか、」
一緒にいる時間を信じてよ、なんて言外に含ませてみれば迷ったように目を伏せた後、
すごく聞き取れないぐらいの声で「ください」っと一言。
手を伸ばして、ぐいっと頬を無理やり上げる。笑うとかわいいんだぜ、この人。
「笑って受け取ってくださいよ、せめて」
「むちゃくちゃだぞ?」
「むちゃくちゃでも笑う。ほら、」
泣き笑いになりながらもにっこり笑ったこの人の指に指輪をはめてみる。
ちょっと緩かった。最後に決まらないって、恥ずかしい。
張りつめていた気持ちも切れて、俺も笑った。
笑顔で迎えるプロポーズもどきもなかなか良いものだ。
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[[優しい復讐 >28-979]]
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にっこり笑顔が二つ
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あのさ、とか言っているこの人が愛おしかった。
オレの恋人は、高校のころの先輩で今は会社の上司で頼れる人だ。
バリバリ仕事をして、余暇はしっかりと取るし公私混同は絶対にしない。
それにめちゃくちゃ頼りになるし優しい。
たとえば、めちゃくっちゃ困難なことがあってそれで話を振るとする。
そうしたら、この人はどんな相手にだって
(どんなにめんどくさい人にだってだ!)手を差し伸べる。
自分の仕事を抱えながらも、そっちの仕事もこなして、さらに周りに気も使える。
女子の同僚からは”高嶺の人”とか言われていて、
上司にしたい人理想の恋人私生活が気になる人ナンバー1。そんな人。
…のはずなんだけど、なぜかオレの前ではそんなそぶりは見せないし、
もっと力が抜けている。Jホラーの予告を見ただけで
ぎゃーぎゃー悲鳴を上げるぐらいの怖がりだし、
甘いものが好きでからかってみると目に見えてしょんぼりする。
料理をするのも好きで、オレの好きな料理を作るのが特に好きだという。
どこの新婚だよ、とオレは思うけど実際悪い気はしない。
だいぶ外と雰囲気が違うが欠点を上げるとしてもたったひとつしかない。
そして、この人の唯一無二な欠点。高校から変わりないし治らない癖みたいなもんだ。
「だから、何回言われたってオレがセンパイから離れるわけないじゃないっすか。
そりゃ、先輩がオレとの関係を終わりにしたいとかなら、
幸せになりますって誓えるんだったら応じますけど」
「そんなわけないだろ!?なんで俺から別れを切り出すんだよ!
お前が言うならともかくも」
欠点。オレから告白して、べたぼれもいいところなのに、
なぜか見捨てられるんじゃないかって思うのが治らないことだ。
最初も遊びか冗談だと思われた。
「オレ、あんたのことがすごく好きなんすよ。何百回だって言いますけど」
「俺だって好きだよ、だから」
「だから、幸せになる邪魔をしたくないとかっすか?
耳にタコができるぐらい聞いたんですけど」
「 …なら、」
「じゃ、指輪いらないんですね」
…と間があいて。ぽかんとした顔の恋人はオレを見た。
「…今、なんて言った?」
「指輪いらないんですね」
「それって俺に?」
「あんた以外に贈るぐらい好きな人っていないんすけど」
「…めんどくさいよ、今以上にめんどくさくなるかもしれない」
「今でも十分めんどくさいっすよ」
「なら、」
「外で人の期待を裏切れないから頑張って、家じゃ甘えたでネガティブ。
そんな面倒な人と何年も付き合ってるんですよ?
いい加減信じてくれてもいいんじゃないですか、」
一緒にいる時間を信じてよ、なんて言外に含ませてみれば迷ったように目を伏せた後、
すごく聞き取れないぐらいの声で「ください」っと一言。
手を伸ばして、ぐいっと頬を無理やり上げる。笑うとかわいいんだぜ、この人。
「笑って受け取ってくださいよ、せめて」
「むちゃくちゃだぞ?」
「むちゃくちゃでも笑う。ほら、」
泣き笑いになりながらもにっこり笑ったこの人の指に指輪をはめてみる。
ちょっと緩かった。最後に決まらないって、恥ずかしい。
張りつめていた気持ちも切れて、俺も笑った。
笑顔で迎えるプロポーズもどきもなかなか良いものだ。
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[[優しい復讐 >28-979]]
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