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サラリーマン×宅配業者の攻め視点 ----  最初は頼りないな、それだけの感想だった。  猫の手も借りたい時に、まさか子供相手なんてしてられる訳もなく。でも逼迫した状況 で他者の人間に依頼する訳だから、相手を責める訳にもいかない。まあ、慣れない子供を 寄越した責任者には多少の恨みを感じたのは否めないが。  しかし、予想を裏切りきっちり時間内に書類を届けたそいつに、感心した。よくもまあ 焦らずしてのけたものだと。 『いえ、高木さんのお陰です』  子供は何故か嬉しそうに、俺にそう言った。はにかんだ笑みが可愛くて……そう、可愛い という言葉を思い浮かべた時点で、まあ。こいつの事が気に入ったんだな、と気付いた。  思えばまぬけな始まりだったと言えよう。 「工藤君、もう少し待ってくれる?」 「はい」  笑顔で良いお返事。いつもながら全く可愛いものだね。うちの人間なら間違いなく文句 の一つも出るとこだが。……いや、彼の場合は仕事だからというのもあるか。  ここのところすっかり仕事が立て込んでいて、俺達デザインルームの人間は皆死に体の まま高価なドリンク剤で生命維持してるような状況だ。そんな中で工藤忍君の存在はまるで 一服の清涼剤のようなもので。普段は女を忘れているかのようなうちの女子達も、 『忍君の笑顔には癒されるわ~』  と大好評。そんな言葉に冗談言わないで下さいよ、と明るく返す屈託のなさもポイント高 らしい。いやま、彼女らは彼を「恋人より弟?」って目で見てるらしいんだが。  俺なんて思いきり彼氏に立候補するんだけどな。 「しゅーにーん! 駄目ですよ忍君と遊んでちゃ」 「なら正木は餌付け禁止」 「えぇ~、それはずるいです~」 「ずるかない。こっちは仕事の話してるんだからお前も仕事に戻りなさい」 「は~い。後でチョコあげるからこっち寄りなさいね、忍君」  テンパってる割には調子の良い会話に、彼はくすくすと明るい笑い声を漏らす。 「……悪いね、相変わらずうるさくて」 「いえ。いつも楽しそうでいいです。なんか好きだな、このオフィス」  本当に楽しそうに言うから、それはお世辞ではないのだろう。ようやく纏められた資料 を袋に入れながら、その好きはどこに掛かるんだろうな、と詮もない事を考えた。 「じゃあ、今日はこの2件をお願いします。今回は特に壊れ物なし。水濡れだけには注意 して下さい。場所は……」  いつものように伝達をして、それで短い逢瀬は終わり。今回は邪魔者も居たりして余り 話せなかったが、何、次の機会があるさと気を取り直す。 「はい、ではお預かりします。……あ、そうだ高木さん」 「ん? 何か質問でもあるのかい?」 「いえ。そういえばちゃんと御礼言ってなかったかな、と思って」  ……御礼? 何か言われるような事はあっただろうか。とりあえず先を促す。 「この会社に初めて来た時……言って下さいましたよね。『ベストを尽くすのと無理をす るのは違うよ』って。それで俺随分と楽になったんです。あの言葉がなければ多分、焦って 上手くいくものもいかなかったんじゃないかと思う」  何やら真面目な顔でそんな事を言うから、笑うのも憚られて言葉が終わるのを待つ。 「あの日の言葉は、俺にとって大事な指針になりました。ありがとうございます。それから ……まだまだ迷惑掛けると思いますが、宜しくお願いしま……って、何笑ってるんです?」 「あ、いや……。忍君があんまり……」  可愛いから、とは流石に続けられず。仕方ないので頭を撫でて見せる。反則だろう、 そんなにしおらしく俺を尊敬した目で見ないでくれ。  いい加減理性が崩れ落ちそうだ……。 「だ、から! 何で頭撫でるんです?」 「何だろう、撫で心地がいいからかな」 「……っもう、じゃあお預かりしますっ!」  むくれた顔で去っていく彼の後ろ姿を見送りながら、俺はそろそろシナリオの変更が必要 になったのだと勝手に解釈して。  次のステップに進む為の、密やかなプランを組み始めた。 ----   [[城に潜入して捕まる、お間抜けな忍者さん危機一髪>2-449]] ----

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