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年上の幼馴染
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「年上」と「幼馴染」…なんとなくイメージではあまり共存できなさそうな単語ではあるが、やはりここは有能なる煩悩を駆使して妄想に励んでみようかと思う。
①何歳差か
これはこのお題において極めて重要であろう。あまり離れすぎると幼馴染要素が入らなくなってしまう。
個人的には2、3歳差…最長でも5歳差までが美味しい。
理由としては幼稚園から小学校時代が共に過ごせるかを主としている。「幼馴染」になるためには必須期間だ。
幼馴染要素を前面に押し出すなら幼稚園から一緒、尚且つ中学高校と同じになれる可能性が高い1、2歳差をお勧めする。
この場合は「いつもは同い年みたいで一緒にいてて楽しいけど、ふとした時に見せるお兄ちゃんな顔に思わず…」のような甘い話がメインになる。
年上要素を強調したいならばやはり4、5歳差。
この場合「小学校まではいつも一緒にいれたのに、中学高校では一緒にいられない…」というジレンマ的シリアスも楽しめる。
②家の距離
これは親密度に繋がる要素だろう。
ベタに王道でいくならばやはりお隣同士が一番萌える。
家々の間の隙間が狭ければ狭い程親密度は格段に上がる。部屋の窓から互いに会話をし、教科書の貸し借りもできる。
多少の無茶がありならば窓から窓へと移動も出来るだろう。つまりいつでも互いの部屋への行き来は可能。
いうなれば朝に弱い相手を部屋に行って起こすということも出来る。萌えだ。
この場合受けが起こしに行ってあげてもよし、攻めが起こしに行ってついでに襲ってしまうのもあり。萌えだ。
お隣同士であってもなくとも、ご近所さんではあることから幼馴染には欠かせない「勉強会、お泊りイベント」は完備されている。
③親同士の仲の良さ
これは設定次第では簡単にロミジュリ要素も追加できる。
よくあるパターンでは親同士も仲が良く、両家公認カップルが誕生する。
「いつも遊んでもらってすみませんねぇ」「いえいえ、こっちも遊んであげてるっていうよりは一緒に騒いでるだけなんで」
「でもこうしてみるとほんとに兄弟みたいね」「ふふふ、ほんと、どっちがお兄ちゃんなんだか」
みたいなお母さん同士のほのぼのした会話が交わされることだろう。
↑のお泊りも頻繁に行われる。実に平和的な話だ。
親同士の仲が悪い場合、一気にシリアス度が増す。ガチで許されない恋である。
この場合だとお泊りなど甘いイベントはほぼない。しかしよりスリリングで背徳感のあるものになる。
年上が攻めだと「親なんて関係ない…受けは俺が守ってやるから」のように包容力のある大人に出来る。
年下が攻めだと「なんであの人といちゃいけないんだよ…!」とグレたりするだろう。そこから受けを無理矢理…だったり、また勿論逆もしかり、である。
最終的に「駆け落ちイベ」が発生しやすくなるのはこっちの方である。
新天地にて今まで出来なかった麗しい生活を謳歌するのだ。…うむ、美味い。
お互いの性格は数限りない無数の組み合わせが出来るので割愛。
①~③の組み合わせによってそれぞれ素敵なカップルが誕生する。
年上年下どちらが受けでも攻めでも楽しめるとはなんて素敵。
妄想すると年上の幼馴染って意外に美味しいのね…と思いました、まる。
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[[三角関係>28-019]]
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年上の幼馴染
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三十五才を過ぎると急に、結婚、結婚と言われなくなった。もう洒落にならないんだぞ、という事実を突きつけられるようで怖い。
だって仕方がない、派遣なんてやってるようじゃ結婚できない。彼女だってできない。
いいんだ、そういう時代だから、と開き直る。
妹も結婚して子供作ってるし、母ちゃん的にも、もう俺はいいんじゃないかと思う。
泰成にいちゃんの方がやばい。兄ちゃんはフリーターで、一人っ子で、俺より二つも年上で、おまけにおじさんもおばさんももういない天涯孤独の身だ。
二軒はさんでのご近所さんだから、うちの母ちゃんとしてはもうひとりの息子みたいな気持ちで
「豊井家は絶えちゃうねぇ」
と心配してるけど、いやー、無理でしょ。
俺以上に、兄ちゃんはどうにもなりそうにない。それよかうちも名字絶えますけど。
「泰成にいちゃーん、コロッケだよー」
バイトってのは過酷なもので、零時あがりの兄ちゃんは昼夜逆転ぎみの生活だ。
だからと言って、派遣でも正社員と変わらない勤務時間の俺が、深夜にコロッケをわざわざ運ばされるのはおかしい。
「おおー!コロッケ大好き。売ってるのじゃないおばちゃんの手作り大好き」
でも兄ちゃんが喜ぶから仕方ない。
『夜中は人恋しいものだから、お前行ってやりなよ、ひと言話すだけで違うんだよ』
そんなことを言う母ちゃんは、他人に優しく身内に厳しい。俺寝不足になるっつーの。
兄ちゃんのおじさん、おばさんが亡くなってから十年くらい経つから、その間ずっと通い続けてる俺えらい。
通いすぎて、兄ちゃんの家はすでに、もう一軒の自宅のようだ。
「今から食うの?」
「当然! 晩飯なんだよ、お前は? 食う?」
「いや、寝る。もうこっちでいい?」
「パジャマ着てるじゃん、すでに」
「風呂出たらパジャマだって……朝飯は七時に帰るから、一緒に起きろよ。母ちゃん手間だから」
食べ出した兄ちゃんをほったらかしに、和室に布団を敷いたら眠くなる。
「お前、帰って寝る方が早いんじゃないの」
声が飛んでくるが、答えるのがめんどくさい。
「寝に来るのなー、うちに、お前……変な奴」
声が遠のいて、俺は夢の中へ。なんだろうね、俺も。
正直、結婚とかに意欲がわかない。
彼女がいたこともそりゃありましたが、それとこれは話が別だって知ってる。
草食系男子とは俺のことだ。いや、俺らのことだ。兄ちゃんもきっとそんな感じ。
あの人こそ彼女いたのに、結婚すると思ってたのに、おじさん達が亡くなったときに別れて、それっきり女の子とは話題にできない雰囲気。
本当、仕方がないよね。不況だもん。母ちゃんごめん。親父もごめん。どうしようもないです。
この間、母ちゃんが恐ろしいことを言った。
『いっそ、結婚しない子ばっかり集まって、一緒に住めばいいんじゃないかねぇ』
現実に、茶を吹きそうになるなんてことがあるとは。
『だって、そうしたら安心だもん、あんたや泰成君の老後。寂しいひとり暮らしをさせるよりよっぽどいいよ』
泰成君のご両親にも遺書で頼まれたしねぇ、と母ちゃんは笑った。
『あんた、もうこうなったら泰成君のこと大事にしなよ、あれももう結婚しないだろうから、一生仲良くするんだよ』
うちの母ちゃんはいつも、どこまで本気かわからない。
ただ、泰成兄ちゃんにもう二度と寂しい思いをさせたくない、その気持ちはわかる。
久しぶりに結婚の話を振られた。最近入ってきた後輩がマジで無神経で、まわりのハラハラした空気がいっそう俺を傷つけるっつーねん。
「兄ちゃん、結婚するなよ」
俺は今日は台所にいて、おでんを小分けにしたどんぶりをレンジに放り込んでる兄ちゃんに鬱憤をふっかけることにする。
「少なくとも兄ちゃんが結婚しない限り、俺は許される」
「別に俺が結婚しなくてもお前は結婚すればいいじゃん」
「うるせー、どうせできませんよ、だから兄ちゃんも結婚するな、そんで老後はふたりで生きるの」
泰成兄ちゃんのあごがカックンと落ちた。
「……は、お前、何を」
「え?あ、いやいや、この間母ちゃんがさ」
説明すれば、なんとも空しい老後設計だ。俺はだんだんばかばかしくなってきた。
「だいたいさ、安易なんだよ。そもそも先に老後を迎えるのは母ちゃんだっての、自分の面倒より俺の老後かよ、いつの間にか完全に俺が結婚しないことになってるしなぁ」
「んーとさ、じゃあその時はおばさんの介護は俺らふたりですればいいんだよ」
「何言ってんの……ええ?」
見れば、兄ちゃんは真面目な顔でうなずいている。
「ちょっと、兄ちゃん、泰成さん、なんでその気なんですか」
「いやあ、名案だなと思って。固定資産税も一軒でいいしな」
「うわ、具体的! ありえないって、そんな、男同士で」
「いいんじゃん? 別に結婚するわけじゃないし」
「男同士で結婚できないし!」
俺が慌てると、兄ちゃんはきょとんとした。
「あ、いや、俺もお前もたぶんもう結婚しないでしょ? お前、これから頑張るの?」
耳が、頬が、急に熱くなる。
「裕敏……じゃあねぇ、約束。俺がこのまま爺さんになって要介護になったら、裕敏が面倒見て。逆は俺が面倒見るから」
小指を立てられた。
「はい、指切りね、これでおばさんにも安心してもらえるよっと」
絡んだ指ごと腕を振り回されて、うわ、これ、何、いったい。
「いい話だな、俺、裕敏なら安心。老後は一緒に住むかねぇ、うちの方が新しいから裕敏こっちに来ればいいんじゃない? すでにマイ枕置いてあるんだし」
ニッコリされて、ますます血が上る。
と、レンジで爆発音がした。
「泰成兄ちゃん! 卵入れただろ馬鹿!」
「あ、卵……おでんの」
兄ちゃんはこれ以上ないくらい哀しい顔になった。馬鹿だ。
だから多分、兄ちゃんは俺の赤面に気づかなかった。
一生の約束なんかしちゃったよ俺たち。そんで、危なっかしいこの人の介護をするのはたぶん俺の方だ。
いいじゃんそういう人生、きっともう泰成兄ちゃんも二度と寂しくない。
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[[三角関係>28-019]]
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