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死んだはずの相手との再会 ---- 開口一番、どころか目があった瞬間殴られた。 「いってえ!!」 「いてえじゃねえよ馬鹿か!いやマヌケだな、こんなところにノコノコきやがって」 殴られた頭をそろそろとさする。コブにならなければいいが。 「コブになんかなるかよ馬鹿。じゃなかったマヌケ」 「そのネタはもういいって潤ちゃん。それにしても随分張り切ったナリで出てきたね」 11年前に死んだはずの親友は、おれと違って若々しい姿をしていた。 明快闊達を地で行く振る舞いに感情豊かな瞳。年のころは18そこそこか。 青年学校に通っていたころに付いた向う傷までそのままだ。 「還暦すぎるとあかんぼに戻るって言うだろ。そっから数えてこのナリだ」 「なるほど」 「お前は死んでもおっさんだな、ざまぁみろ」 「ふん、ひよっこがナマ言ってら。その計算ならおれはまだ三十路前だよ」 気付けばおれも、しわくちゃな手の甲が随分若返っていることに気付く。 なるほどあの世とはこういう仕組みか。感慨深い。 「いいから還れよマヌケ。あっさり死んでんじゃねえよ。90まであと1年じゃねえか」 「馬鹿言っちゃいけない、もう勘弁してくれ。天寿天寿」 「なぁにが天寿だ、風邪さえひかなきゃまだ」 「潤ちゃん」 憎まれ口に包んだ愛情は変わらない。 11年前に失って、二度と聞けないと思っていた親友の、最愛の人の言葉に こうしてもう一度巡り合えるなんて思わなかった。 道ならぬ恋だ、すぐに煉獄に落ちると覚悟していたのに、どういう計らいだろう。 「おれはね、もう充分生きたよ。お前のいない世界で11年だ。  もう砂を噛むような味気ない世は飽き飽きなんだ。  帰れなんて、後生だから言わないでおくれ」 手を取る。手を取れる。暖かさなどないはずなのに、暖かかった。 「……何が後生だ。死んでんだよ、馬鹿」 「そうだった」 軽く笑うと、潤ちゃんもつられて笑った。 若いころから年をとっても変わらない、目元の笑い皺が無性に愛しかった。 「啓ちゃんには“ぱらいそ”に行ってほしかったんだけどなあ」 「言ったろ、お前のいない世界はもう飽き飽きなんだ」 つないだ手を引きよせて、抱きしめた。 ふれあえるなら、ここがどこだって、これから行くのがどこだってかまわない。 ----   [[気弱な攻め>27-359]] ----

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