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右手×左手 ---- 元々器用な右手は、ちょっとした仕事なら一人でそつなくこなしてしまう。 それを横目に、つまらなさそうにぶらぶらしてる左手。 同じ形なのに、何でこんなに違うんだろう。 まれに器用なヤツもいるけれど、左手一族は大体こんな感じだ。 「やっぱ左手じゃ難しいんじゃない?」なんて言われちゃうと、 ちょっともうたまんない気分な左手。どうせ不器用ですよ俺は。 ところがある日、右手が全治一ヶ月の大怪我を負ってしまう。 一念発起した左手、そりゃあもう頑張った。 白い布でぐるぐる巻きにされた右手の分必死で働いた。 頼りになる相棒の不在を思うと泣きそうに心細かったけど、 苦手な作業も少しずつ出来るようになった。 箸だって使えるようになった。 元気になった右手に、早く見て欲しいと思った。 そして一ヵ月後。 久しぶりに包帯の中から姿を現した右手を左手がそっと撫でる。 傷ついた右手を労わるような、繊細な力加減。 以前とは見違えるほど立派な働きをするようになった左手を見て、 右手は少し複雑な思いを抱いた。面映いようで、何故か寂しい。 「これは、娘を嫁にやる父親の気分というやつだろうか…。」 などと明後日なことを考えながら、左手の箸使いをただ褒めてやった。 ----   [[高校のAET×英語教師>2-389]] ----
右手×左手 ---- 元々器用な右手は、ちょっとした仕事なら一人でそつなくこなしてしまう。 それを横目に、つまらなさそうにぶらぶらしてる左手。 同じ形なのに、何でこんなに違うんだろう。 まれに器用なヤツもいるけれど、左手一族は大体こんな感じだ。 「やっぱ左手じゃ難しいんじゃない?」なんて言われちゃうと、 ちょっともうたまんない気分な左手。どうせ不器用ですよ俺は。 ところがある日、右手が全治一ヶ月の大怪我を負ってしまう。 一念発起した左手、そりゃあもう頑張った。 白い布でぐるぐる巻きにされた右手の分必死で働いた。 頼りになる相棒の不在を思うと泣きそうに心細かったけど、 苦手な作業も少しずつ出来るようになった。 箸だって使えるようになった。 元気になった右手に、早く見て欲しいと思った。 そして一ヵ月後。 久しぶりに包帯の中から姿を現した右手を左手がそっと撫でる。 傷ついた右手を労わるような、繊細な力加減。 以前とは見違えるほど立派な働きをするようになった左手を見て、 右手は少し複雑な思いを抱いた。面映いようで、何故か寂しい。 「これは、娘を嫁にやる父親の気分というやつだろうか…。」 などと明後日なことを考えながら、左手の箸使いをただ褒めてやった。 ----   [[右手×左手>2-379-1]] ----

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