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吐息だけが触れ合うキス ---- 寝る前に、坊っちゃまに「おやすみなさい」の挨拶をするのが、私の日課になっていましてね。 もう2年近くになるでしょうか。 もっとも、いつも既にお休みになられていますから、寝顔に声をかけるほか、ないのですが。 夢の中の坊っちゃまは、今日も幸せそうに微笑んでいらっしゃいます。 近頃、やけに大人びた振る舞いにこだわりはじめ、 「もう『坊っちゃま』なんて呼ぶな」 などと叱られてしまうこともありますが、寝顔はまだまだあどけなくて。 まるで少し歳の離れた弟のように、あるいは、 ……いえ、やめておきましょう。おこがましいにもほどがある。 ですから、お休みのくちづけは、今夜も吐息だけ。 そっと顔を近づければ、かすかな寝息が私の唇に触れ、そこがじわりと火照る気がします。 その熱をお返しするように、彼の唇に向かって、小さく「おやすみなさい」と呟く。 …意気地のない、私なりのくちづけです。 元々、おそばにいられることすらも叶わぬはずの性分なのです。 こうして寝顔を拝見できるだけで、日々を一緒に過ごせるだけで、私は十分しあわせなのです。 おやすみなさい、坊っちゃま。…今日も、いい夢を。 ---- [[赤頭巾×狼>13-639]] ----

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