「26-949-2」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

26-949-2」(2013/08/15 (木) 03:15:51) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

セクサロイドとインキュバス ---- 彼は寂しそうに見えた。少なくとも、そのような外的特徴を備えていた。 伏せた目。物憂げな眉。血色の悪い頬。丸めた背。 目があったので話しかけると、しばらくして「ああ」と得心の声をあげた。 よくある反応だ。そして、その次の反応は大抵、私に用がある場合とない場合で大きく異なるのだが、 彼の場合は前者であったらしかった。 私は需要があったものと判断し、彼と共にしかるべき場所に赴いたのだった。 「ばっか、ばっか、馬鹿じゃねーの!? なんで俺がやられる方だと思うのさ、それも男とかねーし!」 挿入の直前で拒否され、私はその機能を一時停止した。 「誘ったのはお前の方だろ? 俺のセックスに興味があるって言ったじゃないか」 「そのしゃべり方もやめろ!気色悪い」 「……そういうご要望でしたので。男らしくやってみろ、と最初に」 「できるのか、って言ってみただけ!なんかお前みたいな機械があるって聞いてたからへぇー、って思っただけなんじゃん!ほんとにやるかよ、馬鹿らしい! だいたい、お前俺のこと知らないだろ?俺は女専門だっての」 「それは、失礼しました。では今回は、ご依頼というわけではなかったのですね」 「ちょっと見てみたかっただけっつーわけよ、ほんとに人間じゃないのなーって」 何故か、彼は寂しそうな顔をした。また。 「はい、私は人間ではありません。登録され、ご要望に応じてこういった行為をサービスするものです」 「人間そっくりなのに匂いがなかった」 「匂いですか?」 私には、体臭も機能の一つとして、人間のように、より望ましい形で付加されているのだが。 「俺らの食べ物だよ、わかんなくていーの。……あーあ、まったく、お前らみたいなのが増えると、俺みたいなのは死ぬしかないわ」 「同じ職業の方というわけですね、人間では、珍しい」 ようやく、私にも彼の寂しい顔の理由がわかったというわけだ。 しかし彼は言った。 「そんなんじゃねーよ」 彼との出会いは、いつでもはっきりと思い出せる。私の記憶が失われることはない。 私は、あらゆる面において、人間を凌駕する存在として作られた。 では、なぜ創造主は、私に命、魂という機能を備えてくれなかったのだろう。 それがあれば、おそらく私ですらも、彼の食糧になりえたのではないのか。 彼が私に抱いた感情を、私は持たなかった。あるいは、彼の人より長すぎた生において、何らかの障害が発生してしまったのか。 彼は、自分が飢えて消滅するのだと私に語った。もう、人間からエネルギーを得る気になれないのだと。 私がいくら彼と行為をともにしても、彼にとってのエネルギー(彼は精気といった)は満たされない。 医療の必要性を説いたこともあったが、一笑に付された。 「でもな」 彼は笑う。 「精気はないけど、お前は美味い。他の奴は食えない、もう」 気がつけば私はまた、彼の映像を繰り返し再生している。決して失われない彼の姿。 ---- [[泣くなよ>26-959]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: