「26-949-1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

26-949-1」(2013/08/15 (木) 03:15:17) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

セクサロイドとインキュバス ---- 何かなァ、と彼はベッドにうつ伏せて呟いた。横たわった僕のすぐ横に、端麗な横顔が来る。 色の薄い髪の先が滑り落ちて、尖り気味の耳が露わになる。剥き出しの背には蝙蝠のそれに良く似た翼がぱたついて、いかにも退屈そうだった。 「オマエとしても、あんまりキモチヨくないんだよなァ」 そう言われると、僕としてはどうすればいいか分からなくなる。 黙り込む僕の方に顔を向けて、彼は悪戯っぽく笑った。僕が惑うのを楽しむように。 「オマエ夢見ないだろ。オレとしてはソッチがフィールドだからさ? 生身ってナンか変なんだよ」 「……そうでしたか」 「ま、しょげんなよ。へばンない相手は久しぶりだったしさァ」 伸ばされた手に頭をぐしゃぐしゃされながら、伝えられた不満を解析して、どうにかできることがないか考えてみる。 暫しの沈黙の後、やがて一つ、いいことを思いついた。 体を起こして、訝る顔を左右から挟むように、ベッドへ両手を付く。できるだけ優しく笑う表情を作って―― 「では、役割を変えてみましょう。未知の中に新たなる趣味嗜好を見出せるかもしれません」 「ちょッと待てよオイ」 「あ……あの、もう過去に体験済みでしたか。ごめんなさい」 「ねーよ! ねェけどそこがモンダイなんじゃねェんだよ!」 「良かった。ご心配なく、方法は心得ていますから」 「オマエ分かってる? ナイだろ? そもそもオレの名は『上に乗る』って意味でだなァ」 「ええと……大丈夫です。お望みの体位にお応えします」 「そういうイミで言ってんじゃねーよ!」 目を三角にする彼の頬に、僕はそろりと手を触れた。 「貴方に快い夜をお約束致します」 それは昔、僕が売り出された頃のキャッチコピー。 規約に従い、前の持ち主のデータはもう、僕の中に何一つ残っていない。 覚えているのはただ、棄てられた後の、どうしようもない不安と虚しさだけ。 彼が悪魔なんて非現実的な存在でも、面白半分にでも、僕を拾ってくれた時、まだ価値があるんだとどんなにほっとしただろう。 ――もう二度と手放されたくない。失いたくない。一人にはなりたくない。だから。 「マスター」 覗き込む僕の顔に、何を見たのだろう。 どォにでもなれ、と自棄気味に呟いて、マスターは仰向けになると僕の首に両腕を回した。 ---- [[セクサロイドとインキュバス >26-949-2]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: