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元ヤンキーな家庭教師×優等生な17歳 ---- 「では先生、宜しくお願いします」  上品な微笑みを浮かべ、茶菓子を置きに来たらしい奥様は去っていく。年齢より若い イメージなのはやっぱエステとか通ってるのかね。うちのババアと比べものにならん。  まあそれはどうでもいいが。  で、その奥様からお生まれになったお坊ちゃんもこれがまた俺みたいな下々と比べ ちゃいかんくらい、箱入りというかなんつーか、お上品な感じで。俺みたいな元ヤン が務められたのは最早奇跡だね。  ……いや嘘。単に派遣会社の割り振りなんだけどさ。大学だけはそれなりのとこ入った もんで、まあまあそれなりにいいお家を紹介して貰えたようで。  いやさ、流石に先の事考えるとバカやってるのもどうかと思うっしょ? 中高で散々 やったからまあ、それなりに落ち着いてもいいかなと思うし。学歴はあって損ないし。  カテキョって結構いい金になるしなー。 「……先生?」  茶をすすりつつまったりしていると、怪訝そうな声がする。カップはマイセン、スプーン はおそらく銀製。出てくる菓子も見たからに高級そうだよ。ははは。 「何ですか? 何か解らない事でもありましたか?」  なんて自分でも怖気が立つような上品な声で受け答えする訳ですよ。だってあれじゃん 折角金払いの良い家だし手のかかんない奴だしこりゃ媚びとくしかないっしょ?  見るからにいい服着て、綺麗に髪を整えて。カップを握る指先の細さを見ても、これぞ 上流階級、って空気を纏ってるこのおガキ様は、俺の生徒なんですが。ここで「何だよ このクソガキ」なんて坊ちゃんに言って、それを奥様に報告されたら困るじゃん。奥様 卒倒しかねないし。ていうか即刻クビ? それは避けたい。短時間高収入の上肉体酷使 しないなんて条件滅多にないし。そりゃ意思だって曲げるね、俺は。 「あ、いえ……。それは大丈夫です。先生教え方お上手ですし」  尊敬、という感じの眼差しを向けてくる良い子ちゃんに俺も優しく微笑み掛けてみたり して……ああ、鳥肌立つ。昔の仲間に見られたらぜってぇ爆笑されてるよ、俺。 「君にそう言われると、僕も安心します」 「本当ですよ? 先日の小テストも良い点を貰えましたし。……あ、そういえばこの公式、 どうしても途中でつまづいてしまうんです。教えていただけませんか?」 「ああ、これですか……では手順を追って一つずつやってみましょう」 「はい」  君、君とか言うか。僕って誰? ……いちいちツッコミ入れてないと精神保てない俺 って案外繊細かもしれんね……。  室内に流れるBGMはショパンだかモーツァルトだか、眠くなりそうな優雅な曲で、 これもまた俺の平常心を試す訳ですよ。坊ちゃんの向かってるライティングデスクもまた いい木を使ってる。椅子も綺麗な柄織りの布張った、やたら彫刻が細かいやつだったりで、 汚したり壊したりしたら俺のバイト代なんて軽くすっ飛びそうで内心ひやひやしたりする訳 ですが。 「……という訳です。後は例題をいくつか出しておきますので、反復練習をしておくと 良いと思いますよ」 「ありがとうございました。ああ、ここでつまづいてたんですね。成る程……」 「ちょっと公式がややこしいですが、要は慣れですから。頑張って下さいね」  にこにことお互い笑い合う。ああなんてのどかな風景。弟をべしべし殴りながら無理 矢理高校に入れた時とは大違いだ。いやまあ……坊ちゃんとは出来が天と地ほども違う んで比べちゃいけないと思うけどな。  美味い茶菓子に優秀な生徒。タルい音楽とお上品な会話を我慢すれば悪いもんじゃない と思う、この職場は。  とか思ってた俺が脳天気だったのか。 「あの……先生」 「何ですか?」 「あの……ちょっと、お話があるんですけど」  ……え、ちょっ……。何で、君はあの、俺の足に手を載せたりする訳ですか?  しかも妙に距離が縮んで……たりもする訳ですけど。 「……ちょ、あの君、どうしてそんな接近する必要が」 「先生……やだ、解ってるんでしょう?」 「わ、解る訳ねーだろうこのクソガキ!」 「先生ったら実は男らしいんですね……そんなとこもいいな」  む、胸元でののじとか書くんじゃねえええええええ!?  何その潤んだ瞳! 何頬染めてる訳!? 俺は全くその気がな……。  ぎゃあああうぇsdrftgyふじこlp  ……その日俺は、何か大切なものを無くした気がした。 ----   [[雨の中>2-319]] ----

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