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難聴(ラノベ主人公的意味で)攻め ---- すきだ、って南が言った時聴き間違いだと思った。「酢来た」とか「鍬だ」とかの。 日常生活でまぁ仮に今と同じ月9に出てきそうなこじゃれた夜景の見えるバーかなんかでなんで男2人でいるかっていうともちろんナンパなんだけど、例えば食事と一緒に酢が来て「酢来たよ」とか言うシチュエーションは日本中どこかにもしかしたらあるかもしんないけど「鍬だ」っていつ言うかな。 中学生が日本史の資料集開いて先生が日本の稲作の歴史を紐解きながらこれが「鍬だ」とかはあるだろうけど、鍬かついだ農民がバーになだれこんできたり、 実は今食ってる野菜スティックはバーテンダーが家庭農園で精魂こめて作ったもので、俺がバーテンダーにこの野菜スティツクうまいっすねって言ったらカウンターの下から鍬を出してこれで週末耕してるんですよーって言って南が「鍬だ!」って言っていや俺は何考えてるんだろう。 まぁでも。ウイスキーを舐めながら反射的に浮かんだ考えを打ち消す。「好きだ」はない。流れてしまった会話をなんか蒸し返すのも面倒でいつのまにか話が野球の話になっててそんな出来事を俺は酒の酔いもあり忘れた。 バーを出て、エレベーターに乗り込む。今日は収穫もなかったのに南は上機嫌でスキップしそうな勢いでエレベーターに乗った。 エレベーターはガラス張りで、眼下にネオン瞬く夜の街が広がる。正直俺はこのタイプのエレベーターが嫌いだ。高いとこが苦手ってわけじゃなく車で山道走ってる時みたいに頭の芯がくらっとして気分が悪くなる。 しょうがなく外を背に腕組みして目を瞑ると外を見ていた南が低い声で俺を睨みあげる。 「何怒ってんの」 はぁ?と思った瞬間ネクタイ引っ張られてがっつりチューされた。うわ、と思ったけど超絶キスのうまい南に嫌悪感より先に好奇心が勝ち更なる快感を探求すべく頬を両手で覆ったり、角度を変えてキスしたり、なんか女の子にするみたいにしてしまった。 「なぁさっきやっぱり」 27,26,25,24 エレベーターの階数表示を見ながらキスの合間に息も切れ切れに言う。 「好きだって言った」 ちょっと逆切れするみたいに南が言う。いつも勝気な切れ長の目の奥が濡れててやらしい。 「悪い、酔ってた、忘れろ」 もっとキスしたい、と俺が南の腰を抱くと南は急に俺の胸を押した。うーわツンデレむかつく殺すと思うと同時にエレベーターが1階についた。俺の手をくぐりぬけ開いたドアから先に行こうとする南をつかまえ閉まろうとするドアを手で制しながらキスの続きをする。さっき俺にキスしてきたのはなんだったのか南はすごい抵抗をみせそのたびにガンガン容赦なく閉まるドアに俺達は体のあちこちをぶつけながらそれでも南に俺は食らいついた。 こいつとならセックスできるわ。頭の中ですでに南を脱がしながら再び上昇し始めるエスカレーターの中に喧嘩の相手を投げ飛ばす勢いで南を強引に押し込み、乱暴に最上階のボタンを押した。 ---- [[書生同士>26-759-1]] ----

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