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美男と野獣 ----  夢を見た。  綺麗な薔薇園の片隅に、醜い姿を恥じるかのように蹲って、今にも息絶えそうな獣の夢を。 「……!」  地上に這い出る木の根に躓き、少年の体は転がった。  野獣に贈られた綺麗な服を土が汚す。それでも立ち上がり、土を払う間も惜しんで、また駆ける。 「……どうか」  どうか間に合ってくれ、と呼気を荒くし願う。  彼と同じ姿が欲しい、と唇を噛んだ。  そうしたらきっと、今よりもっと速く走れる。彼の重い体を助け起こすことだってできる。  端麗なだけの見目は要らない、あの赤い目に映らないなら。  街の娘達の歓声も要らない、ただずっとあの低く静かな声を聞いていたい。 「俺は馬鹿だ」  七日も時を貰っていながら、どうして刻限までに戻れなかったのだろう。  どんなに惜しんで引き止める声も、彼の死に行く姿に比べれば、胸を引き裂きはしないのに。  どうして今になって、こんなにも彼を好いていたと気づくのだろう。  もっと早く気づいていれば、あの城を出る前に、口付けの一つも出来た筈なのに。  ――きっと、戻ってきておくれ。でなければ私は、悲しみで死んでしまうだろう。  見目に比べてなんて繊細な事を言うのだと、あの時は笑って発った。それが今になって、自責は重く圧し掛かる。  どうか間に合ってくれ。  どうかまだ生きていてくれ。  その角ごと、貴方の頭を抱きしめるから。  その牙に触れて、口付けをするから。  その毛並みを撫でて、何度だって愛してると言うから。 ---- [[美男と野獣>26-739-1]] ----

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