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狼男と吸血鬼 ---- 「んで、旦那。これからどうします?」  日の当たらない深い森の中、青白い肌をした少年が立っていた。周りには動物の屍が 散乱し、血液が全て抜き取られていた。少年は口の周りを無表情で拭いながら、ゆっく りと近づく男に目を向ける。 「お食事も済んだことですし、そろそろ俺の方も何か頂けないでしょうか?」  飄々とした口調で少年にせがみながら、背後から白い首筋に手を優しく当てた。男の 目はギラギラと光らせ、鋭い舌と歯を覗かせていた。 「気安く触るな」  少年は男の意図が分かると、抑揚の無い言葉でそれを拒むが、男はお構いなしに首筋 に唇を近づけていた。 「もう一度言う、俺に気安く触るな」 「旦那は半分人間の血入ってますから俺のことを完全には支配出来ない……なんなら今 ここで」  そういいかけた瞬間、男は殺気を感じ、後ろに退く。向かい合った少年の手には短剣 が握られており、うっすらと血が付着していた。 「冗談ですって! 最近眷属の少年にご執心でしたからつい、だからそれ仕舞ってくだ さいよ」  男が少し慌ててそう言うと、眉間にしわを寄せながら少年は短剣をしまった。しばら くの沈黙の後、不機嫌そうな顔が少し緩まったのを男は感じた。 「……寂しかったのか」 「ええまあ、そんなとこです」  ばつの悪そうな顔を見られまいと、男は少年から目を逸らした。普段主人である少年 の命令に背くことはない男だったが、ずっと放置されていたため、我慢が出来ずについ 行動に移してしまったのだった。  すると少年は男の右手を持ち上げ、さっき傷つけて出てきた血を丁寧に舐めとった。 少年の舌の生暖かさと、上目遣いで見上げる顔に男の胸は高鳴っていた。 「分かった、今夜相手をしてやる。まずは後始末をしておけ」  無表情に戻った少年は男に命令を下し、森の出口へと向かった。  少年の後ろでいくつかの遠吠えがした。 ---- [[なかなか告白できない>26-639]] ----

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