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ドライブ ---- 「頼むから乗って」 バイト帰り見覚えのある黒いワンボックスが止まると同時に窓が開いた。 びっくりしたじゃないか。 必死な形相で言ってくるモンだから助手席側に回ってドアを開けるとあからさまにほっとした顔になる。 ムカつく。 何も言わずにシートベルトを締めると車は走り出した。 「…車に俺を乗せて逃げ場無くす作戦か?」 「…ごめん、でも、乗ってくれるなんて思わなかった」 だってお前必死な顔してたもん。 駅前のCD屋の洋楽コーナーでよく見かけるスーツの男 という印象が変わったのは1年前 少女漫画みたいに一枚のCDを同時に取ろうとして手が触れ合った。 お互いびっくりしたけどスーツの男が「この店良くいらっしゃってますね、洋楽好きなんですか?」 なんて言ってくるから「好きですよ」なんて返しちゃって。 その後意気投合して俺たちは友達になった。 相手が三個上だと知ったのは半年前。 俺のことが好きだと告白されたのは一週間前。 返事しない俺に業を煮やしたのか無理やり押し倒されたのは四日前。 「無理やり、あんなこと…してすまなかったと思ってる」 「俺の方向くな、前向け、信号変わってんぞ」 俺の指摘に慌てて前を向く、傍から見りゃエリートサラリーマン風なのにどっかしら抜けてるんだ。 「許して欲しいなんて思ってないよ」 「じゃあ許さなくていいのかよ」 「いや!許して欲しいけど…」 「どっちだよ」 「ごめん」 勝手知ったると車のサイドボードにあるCDケースを引っつかんで何枚か見てみる。 …少女漫画再びか。 あの時手が触れ合ったCDで目が留まってしまったのである。 これも運命? CDをかけると 「許して欲しけりゃ今夜一晩ずっと首都高ドライブだ。このCD延々リピートでな」 言ってやると 「あ、あぁ…わかった」 なんて訳分かってない顔と嬉しそうな顔をしやがった。 一晩中運転だぞ?マゾかお前は。 ---- [[声>12.5-979]] ----

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