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出征
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俺はもともと虚弱体質だったこともあり、兵役から免れた。
しかし、あいつには容赦なく赤紙が送られてきた。
「行くな」と言いたい・・・・・・しかし、このご時世にそんなことを言えば
非国民とののしられること請け合いだろう。
俺は、せめてあいつに無事で帰ってきてほしくて、千人針を縫った。
出征当日。
「お国のために行ってくる!」
あいつの笑顔はいっそ清清しかった。
俺は千人針を渡す機会をうかがっていたが、
あいつは家族友人に囲まれていてとてもそんな機会は巡ってこなかった。
隅であいつをじっと見つめている俺にあいつが気がついた。
「お前も来てくれたのか」
あいつは穏やかな笑みで俺に駆け寄ってくる。
だめだ、来るな。俺の女々しい心が見透かされそうだ。
「・・・・・・生きて帰ってこいよ」
俺がやっと口にできたのはそれだけ。たったそれだけ。
それが、最後の言葉。あいつは帰ってこなかった。
俺は渡せなかった千人針を握り締めながら苦い後悔に浸る。
後日、あいつの遺品が還ってきた。
俺宛の、出せなかった手紙、十数通。
全て読破して、俺は始めて涙を流した。
あいつの出征前にもっと会話しておけばよかったな・・・・・・
あいつの笑顔はひまわりに似ていた。
もうその笑顔を見ることはできない。
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[[君が僕の事を好きな事はずっと知っていたよ>12.5-939]]
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