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短気な後輩×卑屈な先輩 ---- ゴールデンウィークが終わりに近づくころになると、毎年のことながらどこにも出たくなくなる。 五月病って名前もついていることだし、と布団かぶってごろごろしてたら、 いきなり上から踏みつけられた。 「アンタまただらだらしてんのかよ!何時だと思ってんだ、起きろ!」 がんがん踏まれる。がしがし蹴飛ばされる。 不法侵入者に用はない、と丸くなろうとしたら、今度は毛布ごとひっぺがされた。 「アホか。アンタまた五月病とか言ってんだろ?アンタのは年中じゃねーか。 単なるサボリだろ。とっとと起きろ。GW最後の日曜だってのにうざいこと言ってんな」 イライラしてるのが口調で分かる。大体こいつは瞬間沸騰がすぎるんだ。 二年前に高校で告られた時だって、最後は半分怒鳴りつけられてた気がする。 「ホラ。起きな」 差し出される手をぼんやり眺めた。でかい手だ。身体もでかい。 来年からプロになるんだっけな。前逢ったときよりたくましくなった。 二流大学でもたもた文学なんてやってる自分と比べると、もう嫌になる。たまらない。 去年卒業したときにもう終わるかと思ってたのに、何でだかまだ続いてる。 おまえ本当にそれでいいの。おれおまえに何にもしてやれないよ。 「なに不細工なツラしてんだよ」 イライラしてた顔が、いきなり心配そうな顔になって、次にぱっと歯を見せて笑う。 でかい手が頭を撫でてきて、「よしよし」なんて今度はガキ扱いらしい。むかつく。 「眠いんなら一緒に寝るか。な、先輩」 短気で粗雑で口が悪くて年上を年上とも思わないくせに、こうやって不意に優しい。 ごめんな。なんかおれ、いつまで経ってもこんなんで。ごめんな。ごめん。 「アンタはそれくらいでちょうどいいよ。オレがいないとダメだろ?」 やけに嬉しそうに言うもんだから、ついつい涙腺が緩みそうになったのは黙っておこうと思う。 ----   [[無職者と新幹線で飛び回る有職者>2-259]] ----
短気な後輩×卑屈な先輩 ---- ゴールデンウィークが終わりに近づくころになると、毎年のことながらどこにも出たくなくなる。 五月病って名前もついていることだし、と布団かぶってごろごろしてたら、 いきなり上から踏みつけられた。 「アンタまただらだらしてんのかよ!何時だと思ってんだ、起きろ!」 がんがん踏まれる。がしがし蹴飛ばされる。 不法侵入者に用はない、と丸くなろうとしたら、今度は毛布ごとひっぺがされた。 「アホか。アンタまた五月病とか言ってんだろ?アンタのは年中じゃねーか。 単なるサボリだろ。とっとと起きろ。GW最後の日曜だってのにうざいこと言ってんな」 イライラしてるのが口調で分かる。大体こいつは瞬間沸騰がすぎるんだ。 二年前に高校で告られた時だって、最後は半分怒鳴りつけられてた気がする。 「ホラ。起きな」 差し出される手をぼんやり眺めた。でかい手だ。身体もでかい。 来年からプロになるんだっけな。前逢ったときよりたくましくなった。 二流大学でもたもた文学なんてやってる自分と比べると、もう嫌になる。たまらない。 去年卒業したときにもう終わるかと思ってたのに、何でだかまだ続いてる。 おまえ本当にそれでいいの。おれおまえに何にもしてやれないよ。 「なに不細工なツラしてんだよ」 イライラしてた顔が、いきなり心配そうな顔になって、次にぱっと歯を見せて笑う。 でかい手が頭を撫でてきて、「よしよし」なんて今度はガキ扱いらしい。むかつく。 「眠いんなら一緒に寝るか。な、先輩」 短気で粗雑で口が悪くて年上を年上とも思わないくせに、こうやって不意に優しい。 ごめんな。なんかおれ、いつまで経ってもこんなんで。ごめんな。ごめん。 「アンタはそれくらいでちょうどいいよ。オレがいないとダメだろ?」 やけに嬉しそうに言うもんだから、ついつい涙腺が緩みそうになったのは黙っておこうと思う。 ----   [[短気な後輩×卑屈な先輩>2-249-1]] ----

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