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最後に伝えたい言葉 ---- 「十中八九脳漿ブチ撒けて御陀仏、やな」 ヒュゥ、と場違いな口笛の音。こんなときでも口許には狂犬じみた笑み。 ――嗚呼、神様仏様。 この人のこのカオが見れなくなることだけが心残りです。 つい先刻まで縛られていた手首をさすりながら窓を覗き込む。 ここから飛んで助かる可能性は五分…というのはあまりに楽天的過ぎる数字だろう。 まぁ、どちらにしろ連中はおれ達を生かして帰すつもりはあるまい。 それならいっそ今ここでこの人と一緒に死ぬ方のも悪くない。 想い人と共に死ぬ。なかなか甘美な響きじゃないか。ああ、ますます悪くない。 死の間際の感傷か、押し殺してきた言葉が自然に口をついて出る。 「神崎さん、最後に聞いて欲しいことがあるんですわ」 「ぁア? なんや改まって」 「――おれ、ずっとあんたのこと愛してました」 「へッ! 寝言ぬかしよる。おどれは恋愛ドラマの見すぎじゃ、あほんだら。 そんなナマっちょろいモン見よるからこんな目に遭うとるんじゃ、え? このくそボケ」 「……あんたかて同じ目に遭うとるやんけ」 「あぁ? 舐めたクチ利きくさって、余裕やないかいクソボケ。 ええか、“生きて帰れたら一発ヤらせい”」 「……は、」 「どうせ言うんやったらこん位言うたらんかい、ドマヌケ」 「……言うたら、ヤらしてくれるんですか?……嬉しいな」 「おもろい、万が一生きとったら一発と言わんと腰抜かすまでヤらしたるわい」 男の口許が挑発的に釣り上がり、笑みの形を作る。 ギラギラと光る、敗北を知らない瞳で。 獰猛な獣のような、見る者の飢餓感を底無しに煽るような――。 「さ、行くぞ。腹括れよ」 「……ええ、さっきの約束、忘れんといて下さいよ」 「ハハ!その意気じゃ!」 ――前言撤回。心残りありまくりじゃクソったれ、絶対生きて帰ったる! おれは、強く誓いながら宙に向かって跳んだ。 ---- [[青より赤が似合う>12.5-629]] ----

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